CBXのXには究極と言う意味があります。ホンダのフラッグシップモデルと言えばCBシリーズ。そして、究極のCBと言う意味を持ったCBX。常に最新の技術が投入され続けた、その歴代モデルと歴史についてご紹介したいと思います。
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RC166レプリカモデル?・迫力の直列6気筒CBX1000
1978年12月9日、1966年に世界グランプリを10戦全勝しチャンピオンを獲得した、直列6気筒のエンジンを持つ250ccロードレーサーRC166を彷彿とさせる車両が、赤坂プリンスで発表されました。
北米・ヨーロッパ市場向けに製造されたCBX1000です。
オートバイでは大変珍しい、空冷6気筒DOHCエンジンを搭載したCBX1000はRC166で培った技術をフィードバックしたユニークな車両であり、前から見た直列6気筒は、かなり迫力があります。
当時ホンダの輸出モデルは、北米向けに設計デザインをしていたため、日本国内や北米では大ヒットしたCB750FOURも、ヨーロッパでの販売に苦戦していました。
この危機的状況を打破するために、当時ホンダで二輪部門の総責任者であった久米是志氏がノルマンディ上陸作戦というプロジェクトを立ち上げ、フラッグシップとして開発されたのが本モデルです。
直列6気筒の総排気量1047ccのエンジンCB1Eは、28パイのCVキャブを6基搭載され、その迫力もさることながら、最高出力105ps/9000rpm・最大トルク6.8kg-m/8000rpmを発生します。
そして、当時の世界最速記録である225km/h、0-400m加速11.65秒を誇っていました。
しかしCB750F/900Fと共通のフロントサスペンションやダイヤモンドフレームを使用していたため、強度不足などによりスーパースポーツとしての性能が発揮ができなかったのです。
またCB750F/900Fの大ヒットにより、1981年モデルより高速ツアラーとしてフルカウルが装備され大幅なモデルチェンジとなりました。
モデルとしてはCBX-Z CBX-A CBX-B CBX-C(ハイフン以降のアルファベットはモデルイヤーです)の4種が発売されました。
CBX-Z
型式CB1 1978年に発売された1979年モデルです。
CBX-A
型式SC03 1979年発売の1980年モデル。キャリパーがデュアルピストンに変更、セミエア式フロントサスペンションを装備。ブラックコムスターホイールとされる。
カムシャフトとキャブが変更され最高出力がダウンしています。大型のオイルクーラーが装着されました。
CBX-B
型式SC06 1980年発売の1981年モデルで、フルカウルを装着しリアサスペンションがプロリンク式に変更されるなど、高速ツアラーとして大幅なモデルチェンジがされました。
CBX-C
CBX-Bにグラブバーを装備されたものです。
現在の市場価格はプレミアが付き130万~250万となっており、フルレストアしてあるものでは350万を超えた車両もあったりと、依然高額な車両となっています。
CBX1000の基本スペック
型式:CBX-Z CB1 CBX-A SC03 CBX-B・C SC06
エンジン:空冷4ストロークDOHC4バルブ直列6気筒
排気量:1047cc
最高出力:105ps/9000rpm
最大トルク:8.6kg-m/8000rpm
フレーム:ダイヤモンフレーム
全長:2220mm
全幅:865mm
全高:1175mm
サスペンション:Fテレスコピック Rスイングアーム
ブレーキ:Fダブルディスク Rシングルディスク
永遠の名車・ホンダ初のDOHC4気筒エンジンCBX400F
当時ミドルクラスであれば、4気筒より2気筒の方が速くて効率が良いと言われていた時代でした。
しかし1979年カワサキからDOHC4気筒のZ400FXが鮮烈デビューすると、瞬く間に4気筒がブームとなりヤマハからはXJ400、スズキからはGSX400Fが発売されました。
そして、ホンダ車でも生産中止となっていたCB400FOURの中古相場が新車価格を超えるプレミア車両となる人気ぶり!
その事からもホンダはCB400スーパーホークⅢを発売し対抗しますが、効率優先の2気筒エンジンでは苦戦を強いられ、ついに一度は廃止した400ccクラス4気筒の開発を再開。
1981年に発売されたのがCBX400Fです。
現在でもCB400SFに引き継がれる色あせない洗練されたデザインと共に、ホンダ車での同クラス初となったDOHC4バルブ4気筒エンジンは当時クラス最高の最高出力48ps/1100rpmをたたき出し、最新の技術を惜しみなく投入されたこの車両は瞬く間に大人気となりました。
CBX400Fの特徴として真っ先に挙げられるのが、2輪としては世界初のインボードベンチレーテッドディスクブレーキです。
ディスクブレーキにカバーを取り付け、雨天でも制動力が変わらないというのがメリットでした。
またブレーキローターが一般的なステンレスではなく、摩擦係数の高い鋳鉄を使用しており制動力が高い反面、さびやすいという欠点があったのを、カバーリングすることで外観上の問題をクリアしたのです。
そしてフロントフォークにはTRACと呼ばれるブレーキトルクセンサー型のアンチノーズダイブ機構を、世界で初めて採用しています。
リアサスペンションも量産車世界初となる中空アルミキャスト製プロリンクを採用し、ホイールは軽量化を極限まで図ったアルミ製ブーメラン型スポーツコムスターホイールで軽量ワイドリムとなっています。
そうして400cc4気筒の最後発モデルとして、世界初の技術を惜しみなく投入されたCBX400Fは、その性能とデザイン性で短期間に他の追随を許さない圧倒的な売り上げを達成しました。
その後、レーサーレプリカの台頭から1983年に製造二年・一代でCBR400Fにモデルチェンジされるも、その圧倒的人気から1984年10月に再生産が行われるという異例の事態になりました。
そして、前期モデルはFC、後期モデルはFFと区別されて呼ばれています。
また、エンジンは型式こそNC07Eで同じですが、後期型はCBR400F をベースにしたため、パーツの互換性は少なくなっています。
生産終了から30年以上経過した現在でも、その価格は新車価格の倍以上の100万前後、状態の良い後期モデルでは300万以上の値段がつくほど過熱しています。
またあまりの人気から盗難が相次ぎ、盗難保険に加入できないという異常事態がおきた事も特徴といえます。
モデルとしてはハーフフェアリングが装着されたCBX400F INTEGRA と、排気量を大きくしたCBX550F INTEGRAが発売されました。
CBX400F INTEGRA 1982年7月1日発売。
CBX400Fにハーフフェアリングとハンドル切り角センサー、そして車速センサーをコンピューターによって制御したウインカー自動キャンセル機構を装備したモデルです。
CBX550F INTEGRA 1982年10月1日発売
NC07EをボアアップしたPC04Eエンジンを搭載し、フロントブレーキのインボードディスクをダブル化!フォークスタビライザーとクラブバーを装着しました。
輸出仕様のCBX550Fがベースとなっていますが、国内ではINTEGRAのみが販売されました。
CBX400 CUSTOM 1983年3月24日発売
この車両はアメリカンタイプとなるCBXです。
エンジンはCBX400Fのエンジンを基本受け継ぎますが、油圧ラッシュアジャスターやシャフトドライブ、ブラシレス背面ジェネレーターを採用したCBX650系のNC11Eエンジンを採用していました。
ボア×ストロークの変更も受けましたが、最高出力は48psのまま!見た目にそぐわないハイパワーモデルでした。
CBX400Fの直系統というよりも後に紹介するCBX650・750系の車両となります。
CBX400F基本スペック
エンジン型式:NC07E
エンジン種類:空冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
変速機形式:6段リターン
総排気量:399
最高出力(kW/rpm):48PS/11000
最大トルク(N・m/rpm):3.4kgf・m/9000
全長(mm):2060
全幅(mm):720
全高(mm):1080
ホイールベース(mm):1380
シート高(mm):775
乾燥重量(kg):173
総重量(kg):189
燃料タンク容量(L):17
燃料消費率(Km/L):40(60km/h)
CBシリーズのフラッグシップモデルとして最新技術を投入されたCBX750
1970年代後半からホンダはCB650カスタム・CB750F・CB750Kを製造していましたが、各メーカーがこのクラスに4気筒モデルを市場投入したことによって、特別なモデルではなくなっていました。
それにより、当時ホンダ二輪部門の最高責任者であった入交昭一郎氏が陣頭指揮を執り、新世代のエンジンの開発と共にフラッグシップモデルとして投入されたがCBX750シリーズでした。
DOHC16バルブ並列空冷4気筒のエンジンは、狭角バルブ配置、ピストン形状などの改良により燃焼室をコンパクト化。
油圧式ラッシュアジャスターを採用し、プライマリーシャフトを使わない動力伝達、エンジン後背部へブラシレスACジェネレーターを配置するなど、エンジンの軽量・コンパクト化することに成功しました。
そしてエンジンを車体前方に配置し前後バランスを最適化・軽量化し、さらにラバーマウントにすることにより、振動の軽減にも成功。さらに油圧クラッチやCBX400Fにも採用されたTRACを搭載した豪華装備でした。
CBX750は、CBX400Fの爆発的ヒットにより、CBXへ車名変更した上で開発製造されたモデルです。
CBX650カスタム 1982年12月15日発売
型式RC13クルーザータイプのCBXで排気量655㏄、6速ミッション。各部の軽量化により乾燥重量197kgで当時では珍しい液晶ギアポジションインジケーターを装備していました。
CBX750F 1983年12月13日発売
型式RC17、CBX750最初のモデルで、2灯式の角目ヘッドライトとハーフカウルが特徴です。フロント16インチ、リア18インチのCBX400Fと同じコムスターホイールが装着されていました。
VF750Fに続き、急激なエンジンブレーキを防ぐバックトルクリミッターを搭載し、RC17Eエンジンにはオートカムテンショナーが装備されています。
HRCの前身であるRSCからレースキットパーツもリリースされていました。
CBX750ホライゾン 1984年3月1日発売
型式RC18、CBX750Fをベースに長距離ツーリングを目的に仕様変更されたモデルです。
チェーン駆動からシャフトドライブに変更し、ホイールはキャストホイール、リアブレーキがディスクブレーキからドラムブレーキに変更になりました。
外見もビキニカウル、角型燃料タンクに変更されCBX750Fとの差別化が明確に!
海外にも販売されていましたが、輸入規制対象車両になることから北米仕様は696ccスケールダウンしたCB700S(NIGHT HAWK700S)として製造され、国内仕様は白バイ仕様と限定解除審査用車両などが製造されていました。
CBX750Fボルドール 1985年5月17日発売
CBX750Fをフルカウル化した仕様で限定2000台が販売されました。
市場価格は30万~50万程度です。
1983年式CBX750 基本スペック
エンジン型式:RC17E
エンジン種類:空冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
変速機形式:6段リターン
総排気量:747
最高出力(kW/rpm):77/9500
最大トルク(N・m/rpm):6.5kgf・m/7500
全長(mm):2145
全幅(mm):740
全高(mm):1240
ホイールベース(mm):1465
シート高(mm):775
乾燥重量(kg):217
燃料タンク容量(L):22
燃料消費率(Km/L):36(60km/h)
新車価格:698,000円
後のホンダシングルに大きな影響を与えたCBX250RS
1983年5月にCB250RS、SB250RS-Zの後継として生まれたのがCBX250RSです。
当時大人気だったVツインのVT250Fの影で目立たない存在でしたが、ホンダシングルエンジンとして歴史に残った一台です。
空冷単気筒ながらDOHCで、吸排気効率と燃焼効率を大幅に向上させるために、バルブを放射状に配置したRFVCが採用されました。
CB250RS-Zの26psを上回る30ps/9500rpmを発生し、さらにキャブレターをデュアルキャブにすることにより、低速域から高速域までスムーズに回るエンジンに仕上がっています。
先代のCB250RSなどと比べると振動があり、デザインの不人気も相まって人気車両とは言えませんでしたが、同1983年12月CBX250RSをベースにクラシカルなデザインに変更されGB250クラブマンが発売されました。
この機種は、オプションでアルミフェンダーやシングルシート風カバーが用意され、クラシカルなデザインとそのエンジンの振動が味となり、マイナーチェンジを繰り返し1997年まで製造される超ロングセラーの大人気機種となったのです。
その高性能なエンジンは後にXLR250R系などのシングルエンジンにも多く採用され、CBX250RSが後に与えた影響は大きいものとなりました。
また、市場価格は10万~25万程度となっています。
1983年式CBX250RS主要スペック
エンジン型式:MC10E
エンジン種類:空冷4ストロークDOHC4バルブ並列4気筒
変速機形式:6段リターン
総排気量:249
最高出力(kW/rpm):30/9500
最大トルク(N・m/rpm):2.4kgf・m/8000
全長(mm):2020
全幅(mm):745
全高(mm):1060
ホイールベース(mm):1360
シート高(mm):770
乾燥重量(kg):129
燃料タンク容量(L):15
燃料消費率(Km/L):58(60km/h)
世界最小排気量ツインカムモデルCBX125
1984年、当時世界最小排気量のツインカムモデルCBX125 Fがロードスポーツ入門用のモデルとして発売されました。
エンジンは先行開発されたCBX250RSのエンジンをそのままスケールダウンされたものを搭載し、ロケットカウル、そしてCBX400Fと同じブーメラン型のアルミ製コムスターホイールとマフラーも2into1マフラーで、125ccながら贅沢な作りとなっていました。
同時に中低速トルク重視型のクルーザータイプのCBX125カスタムの2車種がラインナップされています。
また、CBX125カスタムはスポークホイールとなり、CBX250Fが6速であったのに対し5速に変更されています。
マフラーは左右独立のショートメガホンマフラーで、単気筒125ながら迫力のある車両でした。
1993年のマイナーチェンジにて、エンジン特性が変更されたため、これを境に初期型と後期型に分けられます。
そして1984年から1996年まで製造されロングセラーとなりました。
市場価格は10万~25万程度となっています。
1984年式CBX125F主要諸元
エンジン型式:JC11E
エンジン種類:空冷4ストロークDOHC4バルブ単気筒
変速機形式:6段リターン
総排気量:124
最高出力(kW/rpm):15/11500
最大トルク(N・m/rpm):1.1kgf・m/8500
全長(mm):1940
全幅(mm):680
全高(mm):1120
ホイールベース(mm):1280
シート高(mm):770
乾燥重量(kg):129
燃料タンク容量(L):12
燃料消費率(Km/L):45(60km/h)
まとめ
いままでのフラッグシップCBシリーズを超えて行く必要があった時代背景の元、最新技術を投入されつづけたCBXシリーズ。
開発者にとってこのXの文字は大変重要で重いものだったように思います。
実験的でもあり、そしてそれがまた魅力であり、ホンダの一時代と当時の最新技術を感じることができるのがCBXシリーズかもしれません。
このような歴史の元、名機CBX400Fが生まれたことは時代背景と共に知っておくと、また興味深い一台となります。
もう一度、CBXシリーズのように時代を超えてなお新しいモデルが生まれてくる日が訪れるといいですね。
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