1980年代中盤の国内二輪市場で注目の的は、高性能なレプリカバイクに集中していました。街中や峠、サーキットでフルカウルのバイクが多く走る中、時代に逆行するかのように登場したヤマハSRX400/600。絶対的なパワーでは劣る4ストローク単気筒エンジンを搭載したこのバイクは、誰もヒットを予想できなかったにもかかわらず、10年以上販売された人気モデルになりました。当時、ヤマハの開発者はSRX400/600にどのような思いを込めて製作したのでしょうか。また、なぜあえて時代に逆行したSRX400/600が人気モデルとなったのでしょうか。

 

SRX400

Photo by Steve Glover

 

実はSR400/500と全く違っていた!ヤマハSRX400/600とは

 

ヤマハSRX600

ヤマハSRX600 / 出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Yamaha_SRX

 

ヤマハSR400

ヤマハSR400 / Photo by Steve Glover

ヤマハSRX400/600はヤマハ発動機が1985年に発売したバイクで、SRX400が399ccエンジン、SRX600が608ccのエンジンを搭載しています。

当時、すでにヤマハSR400/500が販売されており、SRXはSRのスポーツバージョンという位置付けが一般的な認識でした。

しかし、SR400/500のエンジンが2バルブだったのに対し、SRX400/600は4バルブを採用していました。

 

そんなSRX400/600のエンジンは、4ストローク単気筒SOHC4バルブを搭載したモトクロッサーXT400/600のもの!

そしてXT400/600はXT500の後継モデルであり、XT500は2バルブエンジンでSR400/500に搭載されるエンジンのベースとなったものなのです。

つまり、SRX400/600とSR400/500は、流用されたエンジンは同系列の車種ですが新旧の違いでベースとなるエンジンも2バルブと4バルブで変わっていたのです!

よって、SR400/500よりも新しいSRX400/600はベースとなったエンジンも新しく、2台のエンジンは全く異なるものでした。

また、フレームはスチール製のダブルクレードルフレームを採用し、SR400/500のものより剛性が高くスポーツ走行向けのものとなっています。

もちろんSR400/500のスポーツ版といえば間違いではありませんが、中身はかなり別ものです。

 

ヤマハSRX400/600は当時の二輪市場への挑戦状だった!

 


1980年代はレプリカバイクが売れに売れた時代だったので、レースでの技術をフィードバックしたモデルが次々と出てきたことで、急速にバイクの性能が向上していきました。

また、新しいバイクが次々と登場しても、どのライダーも常に新技術や新素材を用いたバイクを待ち望んでいました。

このように、バイクはフルカウルのレプリカでないと売れない風潮になっていた時代に、ヤマハの開発スタッフは、自主的にSR400/500の後継車の開発に着手。

絶対性能主義な二輪市場に疑問をもっていた開発陣は、SR400/500を継承しつつ新たなシングルスポーツの価値観を示すためのバイク開発に取り組みました。

 

開発コンセプトは『くたばれ、お気楽パコーン!』

 

SRX400/600の開発コンセプトは『くたばれ、お気楽パコーン!』。

これは、当時ミーハーで軟派(なんぱ)な若い男性を揶揄するような意味合いで、『男たるもの流行りのレプリカではなく、シングルスポーツに乗って颯爽と走れ!』という開発者の思いがありました。

少々乱暴なイメージではありますが、ヤマハの開発者たちは流行りのバイクではなくクセがある操作の難しいバイクを乗りこなした時こそが、ライダーの真骨頂であることを伝えたかったのかもしれません。

 

すべてを開発者のこだわりで開発

 

SRX400/600を見たときに驚かされるのは、トライアルバイクのような細い車体です。

一見フロントフォークの幅に収まるぐらいの細さにまでシェイプアップされ、乗ったときのビジュアルを重視するために、メーターパネルは視認性が悪いとされた白をあえて採用。

エンジンは高回転型のDOHCではなく低回転から太いトルクを出すSOHCを採用し、エンジンスタートはバイク感を出すべくセルではなくキックにしました。

4ストロークシングルエンジンをキックで始動させる為には相当な苦労が必要ですが、開発スタッフは女性ユーザーが乗れるようなユーザビリティを全く考えておらず、ライダーへの挑戦ともいえるバイクを開発したのです。

そして、これらの開発陣のこだわりが名車SRX400/600を生み出しました。

 

ヤマハSRX400/600発売前に、筑波サーキットのレースで3位獲得

 

 

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Srx at the Melbourne loop, Donington park. #srx600 #supermono #yamaha #nolimitstrackdays #donington

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SRX600の排気量を608ccと、なぜこのように中途半端な排気量にしたかというと、レースのTT-F1クラスが4ストローク600~750ccと定められている為、このクラスにも参戦できるように600ccから若干の排気量を加えた仕様にしたそうです。

もちろん、750cc4ストローク4気筒DOHCエンジンを搭載したバイクと同じ土俵で戦うわけですから、直線ではごぼう抜きされるのが当然。

しかしSRX600は大パワーのバイクに、あえてコーナリングで勝負するというスピリッツが沸きたてられるバイクでした。

SRX400/600の車体設計チーフであった一木富士男氏(いっき・ふじお)は、SRX600の発売前にSRX600を『XT600改』として、筑波サーキットの『バトル・オブ・ザ・ツイン』に出場しました。

それはあくまで開発サイドの腕試しという名目でしたが、3位を獲得。

SRX600を発売前から、レースで高いポテンシャルを持つバイクであると証明したのです。

そして、SRX400/600が発売されてから2気筒や単気筒のレースも盛り上がりを見せるようになり、単気筒バイクを対象としたレースではSRX400/600が多くを占めていました。

 

ヤマハSRX400/600の仕様・スペック

 

SRX400/600は、1990年にフルモデルチェンジが成されました。

足回りは、リアサスペンションがツインサスからモノサスへ変更され、タイヤは18インチから17インチに変更。

ホイールベースが約3センチ伸びました。

エンジン搭載位置も重心位置が見直されたことで、コーナーリング時の安定性が向上。

フロントブレーキはダブルディスクからシングルディスクに変更されましたが、キャリパーを2ポットから4ポットへ変更し、ディスクも大径化さえたため、十分なストッピング性能を実現しています。

また、エンジン始動にはセルが装着され、トランジスタ点火方式に変更されたため、エンジンがかけやすくなりました。

おそらくエンジン始動に苦労していたユーザー達が、セルをつけてくれるよう要望した事が反映されたのではないでしょうか。

 

初期モデルのスペック

 

1985年モデル ヤマハSRX600 1985年モデル ヤマハSRX400
全長×全幅×全高(mm) 2,085×1,055×705 2,085×1,055×705
軸間(mm) 1,390 1,390
シート高(mm) 760 760
乾燥重量(kg) 149 147
エンジン種類 空冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 空冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ
排気量(cc) 608 399
ボア×ストローク(mm) 96.0×84.0 84.0×67.2
圧縮比 8.5:1 8.8:1
最高出力(kW[PS]/rpm) 31[42]/6,500 24[33]/7,000
最大トルク(N・m[kg・m]/rpm) 48[4.9]/5,500 33.3[3.4]/6,000
トランスミッション 5速 5速
エンジン始動方式 キック キック
タイヤサイズ 前:100/80-18 53H
後:120/80-18 62S
前:100/80-18 53S
後:120/80-18 62S

 

フルモデルチェンジ後のスペック

 

 

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憧れのオートバイ。かっこよすぎる!乗り出し40万円也。 #yamaha #srx600

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1990年モデル ヤマハSRX600 1990年モデル ヤマハSRX400
全長×全幅×全高(mm) 2,090×1,045×720 2,090×1,045×720
軸間(mm) 1,425 1,425
シート高(mm) 760 760
乾燥重量(kg) 149 149
エンジン種類 空冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ 空冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ
排気量(cc) 608 399
ボア×ストローク(mm) 96.0×84.0 84.0×67.2
圧縮比 8.5:1 8.5:1
最高出力(kW[PS]/rpm) 31[42]/6,500 24[33]/7,000
最大トルク(N・m[kg・m]/rpm) 48[4.9]/5,500 33.3[3.4]/6,000
トランスミッション 5速 5速
エンジン始動方式 セル セル
タイヤサイズ 前:110/70-17 53H
後:140/70-17 66H
前:110/70-17 54H
後:140/70-17 66H

 

ヤマハSRX400/600の中古車相場価格

 


SRX400/600は12年間も販売され続けた人気モデルであったため、中古車も少なくはありません。

中古車相場はSRX400で10~40万円、SRXで20~60万円といったところ。

フルモデルチェンジが成された1990年以降のモデルが人気で、初期型に比べれば少し高い設定価格になっています。

 

まとめ

 


SRX400/600は決して誰もが乗れるバイクではなく、ベテランライダー向けに作られたバイクです。

車体の美しさとビッグシングルらしさを追及したことで、初期型のような細い車体と細いタイヤだとコーナーリーングでイン側に車体を倒しこむときは、アクセルを開けリアタイヤにトラクションをかけながら旋回する必要があります。

4気筒エンジンのようなどっしりとした安定性は皆無であるため、ライダーを挑発しているのではないかと思うほど。

しかし、そこにバイクを操る本来の楽しさとあるといえるのではないでしょうか。

SRX400/600はシングルスポーツ好きのために作られたバイクのようにも思えますが、乗りこなせればサーキットでかなり速く走ることもでき、その爽快感は他のバイクで味わえません。

そんなSRX400/600のライディングに、あなたも挑戦してみてはいかがでしょうか。

 

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