大排気量車にすら負けないコンパクトカーのホットモデル、その代名詞的存在といえばいろいろありますが、その中の1台に必ずといっていいほど名前を挙げられるのが、ミニクーパーです。現在BMWがブランドを所有し開発・販売しているNEWミニでも継続されているように、旧ミニで1961年に登場して以来、ミニにとって重要なモデルで有り続けた1台をご紹介します。

掲載日:2018年11月29日

BMC ミニ  / Photo by Andrew Basterfield

 

 

ミニってミニクーパーのことじゃないの?というくらい有名な名車

 

BMC ミニ / Photo by Tim Simpson

 

クルマ好きな方でもクラシックミニを初めて知った時、それを「ミニ・クーパー」と覚えてしまい、その後しばらくミニは全部ミニ・クーパーだと誤解していた人は多いのでは無いでしょうか?

それくらいミニの代名詞的存在となっていたミニ・クーパーですが、実際にはBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)が1959年に発売、イギリス自動車界の統廃合を経て、最終的には2000年まで生産された旧ミニの高性能版となっています。

スエズ動乱(第2次中東戦争)による原油価格高騰で省燃費車が求められていた1950年代のイギリスで、復活していたキャビンスクーターなどより快適かつ高性能で燃費も良く、スペース効率の優れた新時代のコンパクトカーとして登場したのが、BMC ミニ。

最大の特徴は、設計者のアレック・イシゴニスが考案した、「上にエンジン、下にミッションの2階建てパワーユニットをフロントへ横置き搭載する、イシゴニス式レイアウト」でした。

それは世界的主流とはならなかったものの、パワーユニットをコンパクトに収めて最小化し、小さなボディでも広いスペースを持つ、現在のFF(フロントエンジン・前輪駆動)車の原点のひとつとも言える革命児でした。

加えて、ボディの四隅に置かれたタイヤ配置による高速走行からタイトなコーナリングまでの安定性と、後に自転車でも成功するアレックス・モールトン考案のラバーコーンサスペンションによるゴーカートのごときハンドリングを得ていたのです。

そのため、BMC ミニは単なる省エネ低燃費コンパクトカーというだけでなく、パワフルなスポーツカーすらステージによっては圧倒するスポーツコンパクトになりました。

当時のミニがどんなイメージだったかは、1969年に公開された映画「The Italian Job」(邦題:ミニミニ大作戦。2003年にNEWミニでリメイクされているので注意!)を見ると、よくわかります。

 

名チューナー、ジョン・クーパーが注目したミニ

 

BMC ミニ  / Photo by smerikal

 

ミニがデビューした頃、イギリスにはF1マシンなども手がけるレーシングカー製造者として、その名を轟かせていたクーパー・カー・カンパニーを父チャールズとともに創設した、ジョン・クーパーという名チューナーがいました。

ジャック・ブラバムやスターリング・モスなど伝説的なF1ドライバーがステアリングを握るマシンは当時クーパー製が多く、優勝請負人的な存在だったと言えます。

ただし、トライアンフ車で参戦していたイギリス国内サルーンカー選手権(後のBTCC)では、異次元のハンドリングを誇るロータス車に対していいところが無く、伸び悩んでいました。

その時、ジョン・クーパーの友人だったアレック・イシゴニスがミニの試作車を見せてくれたことで、その後のクーパーとミニの名声が決定付けられ、歴史の歯車は大きく動き出します。

そのハンドリングを絶賛したクーパーは早速そのスポーツバージョン開発に共同で取り組み、1961年9月に「オースティン」と「モーリス」2つのブランド(BMCはその傘下に複数のブランドを抱えていた)からミニクーパーを誕生させました。

ベース車の850ccエンジンはロングストローク化で997ccに排気量アップ、SUツインキャブや特別なギアボックス、フロントディスクブレーキを装備して、うち1,000台はグループ2ラリーマシンのホモロゲーションモデルとして生産されます。

その後1,071cc、さらに後には1,275ccエンジンに排気量をアップしたクーパーSも登場し、1971年まで生産。

1990年以降は燃料供給方式をキャブレターから燃料噴射装置に変更し、さらにマルチポイントインジェクション化などで古いエンジンながらも排ガス規制に対応してクーパーが復活します。

ちなみにクーパー以外にも「メイフェア」や「ケンジントン」などのモデルもありましたが、ミニと言えば「ミニ・クーパー」を指す人が多くなりました。

 

ミニ・クーパーを神格化した、1960年代のモンテカルロ・ラリー

 

 

BMC ミニ  / Photo by Paisley Scotland

 

レースやラリーで大活躍が見込まれ開発されたミニ・クーパーは目論見通り数多くのレースやラリーで活躍し、この小さな英国車は、世界最高のスポーツカーであるかのような熱狂で迎えられます。

その最たるものが1964~1967年のモンテカルロ・ラリーで、規則に適合しない前照灯の使用で失格とされた1966年を除き、3度にわたって総合優勝を成し遂げました。

これは主催のACM(モナコ自動車クラブ)が小排気量・アンダーパワー車でも活躍の余地を残すハンディキャップ制が生きていた時代ゆえでもありますが、シトロエン DSなどはもとより、既に登場していたポルシェ911すら蹴散らしての優勝は、世界を驚かせるに十分だったのです。

狭くてツイスティ、しかも季節柄雪の中で開催されるため、大パワー車はハンディなど無くともパワーを活かしきれず、ミニの前にはやはり小型FF車のサーブ 96が優勝していたほど。

後のWRCでもFFのシトロエン クサラ・キットカーがハイパワー4WDターボのWRカーを蹴散らして2度も総合優勝したことがあったりと、ツイスティなコースでは小さく軽い車がパワーはあっても重い車を圧倒するケースがあるのは、今も昔も変わらないようです。

 

市販仕様ミニ・クーパーの代表的なスペック

 

 

 

BMC ミニ  / Photo by smerikal

 

ローバー ミニ クーパー 1997年式

全長×全幅×全高(mm):3,075×1,440×1,330

ホイールベース(mm):2,035

車両重量(kg):720

エンジン仕様:12A 水冷直列4気筒OHV8バルブ

総排気量(cc):1,271cc

最高出力:62ps / 5,700rpm

最大トルク:9.6kgm / 3,900rpm

トランスミッション:4MT

駆動方式:FF

 

まとめ

 

ラリー・モンテカルロでの活躍から神格化され、「ミニと言えばミニ・クーパー」と考える人が多いほど有名になったミニ・クーパーですが、長いミニの歴史全体で見ると、ERAターボやKADツインカムミニといった「ミニ沼」の入口に過ぎないかもしれません。

とはいえ、ミニのホットモデルやチューニングカーが多数生まれたのは、それだけミニが注目されたから、そしてそれはクーパーやクーパーSの存在があったからとも言え、ミニ・クーパーの重要性には変わりは無いでしょう。

ラリーのようなステージで、ナロー時代のポルシェ911と並べて絵になるコンパクトカーなど、他にはそうそうありません。

ミニ・クーパーの放つ存在感は、小さなボディとは裏腹に当時から圧倒的だったのです。

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