ロータリー復活を高らかに宣言した初代や、どうやら最後のロータリーターボスポーツになりそうな3代目に挟まれ、やや目立たない存在となったマツダ 2代目「サバンナRX-7」。影が薄くなりがちなのは3兄弟での次男の宿命とも言えますが、そのグラマラスなルックスが好みという人も多いのではないでしょうか。マツダでのパーツ復刻も始まり、これからもまだまだ楽しめそうな一台です。

マツダFC3S サバンナRX-7 / Photo by Grant.C

安定期にあえてのゼロスタート。ピュアスポーツを考え抜いた2代目サバンナRX-7

マツダFC3S サバンナRX-7/ Photo by FotoSleuth

1960年代に実用化を成功させて「夢のエンジン」と呼ばれ、1970年代にはスカイラインGT-R撃破などのレースでの活躍や、マスキー法を突破した環境エンジンとして大絶賛された事もあれば、オイルショックで「大食らい」と悪者扱いされるなど、浮き沈みの激しかった、マツダのロータリーエンジン。

1978年にデビューしたピュアスポーツのSA22C、初代サバンナRX-7で華麗なる復活を遂げたものの、それから数年後のモデルチェンジでマツダの開発陣達は、必死で手にした安楽な立場にしがみつこうとせず、「スポーツカーとは何か?」という基本テーマを、ゼロから徹底的にツメ直しました。

FC3SサバンナRX-7の13Bターボ / Photo by crazyoctopus

そうして1985年10月に、モデルチェンジした2代目FC3S型サバンナRX-7ですが、いざ完成してみると意外や、オーソドックスな3ドアハッチバックのFRスポーツクーペに仕上がっていました。

「プアマンズ・ポルシェ」と呼ばれた車の1台であり、確かにポルシェ924と似ていないこともなかった初代からのサイズアップで、さらにターボ車では(国外仕様には自然吸気モデルもあった)上置きインタークーラーを収めるためにボリュームを増したエンジンルームや、たくましい印象を与えるフェンダーラインなど、やはりポルシェ944に似ています。

リトラクタブルヘッドライトを引き続き採用したのも、そうした印象に拍車をかけていましたが、「プアマンズ・ポルシェ」的なのはそこまで。

もちろんボンネットの下には13B2ローター・ロータリーターボがフロントミッドに収められ、4リンクリジッドからセミトレーリング マルチリンク独立懸架となったリアサスには、パッシブ4WS的な挙動を特徴とするトーコントロールハブを採用。「ロータリーロケット」と呼ばれた大パワーを、しっかりと受け止めます。

そして初期には185馬力だった13Bターボは後期で205馬力、2シーターのピュアスポーツスペシャル「アンフィニ」では215馬力に達し、まだ280馬力自主規制時代が到来する前の、1980年代後半の国産スポーツとしては十分以上の動力性能を発揮していました。

マツダFC3C サバンナRX-7カブリオレ / Photo by peterolthof

また、1987年8月には電動ソフトトップ仕様のFC3C型「RX-7カブリオレ」が登場。

歴代RX-7では唯一、そして今後ロードスターにロータリーが積まれない限り、ロータリーエンジン車でも唯一のオープンスポーツでした。

レースからドリフトまで、戦うロータリースポーツFC3SサバンナRX-7

マツダFC3S サバンナRX-7 / Photo by Grant.C

登場時期が、ちょうど国産スポーツの進化が伸び悩んで輸入スポーツとの競走に苦戦していた頃で、かつ円高ドル安の進行で、輸出される日本車の価格が高騰。

「プアマンズ・ポルシェ」的な車より高付加価値路線への転換が求められた1980年代後半だった事もあり、国内外における2代目FC3S/FC3C型サバンナRX-7の存在感は、初代や3代目RX-7よりやや薄くなってしまいます。

さらに1990年前後になると、高品質・高性能路線に転じた国産スポーツも多数登場し、バブル景気で新型車への買い替えが盛んだった事も相まって、一時は時代遅れな車と、半ばノーマークだった時期もあったほどです。

マツダFC3S サバンナRX-7/ Photo by JonRiivera(

しかし、日本国内ではあまりニュースにならなくとも、アメリカのIMSAでは初代に続き、日産 フェアレディZと並ぶ、欠かせない存在となります。

そして、ル・マン24時間レースへ参戦したRX-7 GTOは、1991年に総合優勝したマツダ787Bなどが栄光を極めたグループC撤退後のマツダへ、貴重なル・マン完走記録を残しました。

そしてもちろん日本でも、JSS(ジャパン・スーパースポーツ・セダンレース)やJGTC(全日本GT選手権)GT300クラスへ参戦しており、少数派ながら日本のモータースポーツシーンの一翼も担います。

1994年のル・マン24時間レースGTSクラスに参戦、クラス2位、総合15位で完走したFC3S RX-7 GTO/ Photo by PSParrot

ジムカーナやダートトライアル、ラリーといった競技ではさらに少数派で、華々しい成績にはあまり縁がなかったものの、サーキット走行会やストリートでは手頃な価格のチューニングベースとして大人気。

特に1990年代半ばの人気漫画「頭文字D」で準主役級マシンとして登場したあたりから、ドリフトでも盛んに使われました。

特に現在でも活躍している3代目FD3S型RX-7の全盛期は、「FDはちょっと高いけど、FCなら中古で安いし手頃に楽しめる」として、スポーツ走行ではちょっと無粋なトーコントロールハブに「トーコンキャンセラー」を仕込んで、自然なフィーリングを楽しんだユーザーも多かったはずです。

主要スペックと中古車価格

マツダFC3S サバンナRX-7 / Photo by FotoSleuth

マツダ FC3S サバンナRX-7 アンフィニ 1990年式
全長×全幅×全高(mm):4,335×1,690×1,270
ホイールベース(mm):2,430
車重(kg):-
エンジン:13B 水冷2ローター ICターボ
排気量:654cc ×2
最高出力:158kw(215ps)/6,500rpm
最大トルク:275N・m(28.0kgm)/4,000rpm
10・15モード燃費:-
乗車定員:2人
駆動方式:FR
ミッション:5MT
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)セミトレーリングアーム マルチリンク

マツダFC3C サバンナRX-7カブリオレ / Photo by crash71100

マツダ FC3C サバンナRX-7 カブリオレ 1990年式
全長×全幅×全高(mm):4,335×1,690×1,270
ホイールベース(mm):2,430
車重(kg):1,390
エンジン:13B 水冷2ローター ICターボ
排気量:654cc ×2
最高出力:151kw(205ps)/6,500rpm
最大トルク:270N・m(27.5kgm)/3,500rpm
10・15モード燃費:7.3km/L
乗車定員:2人
駆動方式:FR
ミッション:5MT
サスペンション形式:(F)ストラット・(R)セミトレーリングアーム マルチリンク

(中古車相場とタマ数)
※2021年2月現在
FC3S:145万~398万円・34台
FC3C(カブリオレ):89万~298万円・4台

1980年代を代表するマツダFRスポーツも絶滅危惧種?始まったパーツ復刻に期待!

マツダFC3S サバンナRX-7/ Photo by Ian Gulinao

一時は中古車が安く、初代SA22Cより部品があっため、3代目FD3Sより実用性の高さを見込まれ、そこら中のサーキットやミニサーキット、ドリフト場、山奥の公道で見かける車の定番だった、FC3S/FC3C型2代目サバンナRX-7ですが、さすがに中古車のタマ数も激減しました。

生産終了から間もなく30年と言えば古いように感じますが、最近になってマツダは「CLASSIC MAZDA」と称して古い名車の部品復刻へ熱心に取り組んでおり、安いベース車からレストアするハードルは、だいぶ下がってきています。

3代目FD3Sだとまだモータースポーツでバリバリの現役車種なため、ノンビリとロータリースポーツのレストアを楽しみたいユーザーなど、まだ中古車の流通があるうちに、ベース車を押さえておくのもまた一興かもしれません。

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