スーパーGTを楽しむために知っておきたいこととして、各種ルールがありますが、その中でも分かった振りをしがちな所について、分かりやすく解説します!
国内最高峰ツーリングカーレースである、スーパーGT。
GT500クラスとGT300クラスと、性能差がある2クラス混走によって、様々なドラマを産むことから、モータースポーツファンにも大人気なシリーズです。
そんなスーパーGT、わかってはいても見逃しがちなウェイトハンディやBOPなど、
今シーズンをもっと楽しむためにおさらいしていきましょう!
CONTENTS
GT500・GT300 異なる2クラス
スーパーGTを語るには外せない2つのクラス。
こちらの性能差がある2クラスが混走するため、トラフィックが発生し、オーバーテイクの重要なポイントになってくるわけです。
GT500
GT500クラスは、DTM(ドイツツーリングカー選手権)と共通規格を目指した構造とされており、各車共通のシャーシを使用し、エンジンを前方に置き、後輪が駆動するFRレイアウト。
エンジンも直列四気筒、2リッター直噴ターボエンジンで共通化されており、この時点ではクラス内で性能差が現れにくいようにされております。
そこに、各メーカーのボディを乗せ、セッティングしてレースに臨むわけです。
なお、ホンダNSXは市販車がMRマシンであり、シャーシのレイアウトが変更され、MRになっています。
こちらによって性能差を極力減らすため、NSXはウェイトハンディを積むことが義務付けられており、他車よりも重い状態でレースに参加しています。更にNSXは唯一のハイブリッド車両でしたが2016年からはバッテリーを降ろし通常のエンジン車両となりました。
GT300
GT300クラスは、JAF-GT、FIA-GT、マザーシャーシ(JAF-GT300-MC)の各規格に適合したマシンが出走可能なクラスです。
そのため、出走している車両はバラエティに富んでおり、異種格闘技戦。
プリウスがフェラーリやポルシェをオーバーテイク!なんてシーンが見れるのは、このクラスだけかもしれません。
また、ヘッドライトが黄色と定められているため、GT500との混走でも簡単に見分けることが可能です。
で、こちらの3規格、どのようなものかと言いますと・・・
JAF-GT
スーパーGT独自の規格となっており、基本はJAF公認車両またはFIA公認車両(※1)を使用した市販車両をベースにした規格とされています。
((※1)これはJAFやFIAが一定の条件をもとに定めている車両ですね。こちらについては後々別の記事などで特集して説明したいですね。)
しかし、改造範囲がかなり広いため、実態はなんでもありなマシンが多いです。
ヴィ―マックなど、市販されていないマシンも多くありましたし、実車はFFなのに、ハイブリッドであれこそ、MRかつフォーミュラニッポンと同じ3.5リッターV8エンジンを積んだプリウスなどが有名ですね
また、この規格のマシンは、パワーがおよそ300馬力程度に抑えられていることも大きな特徴です。
JAF-GTだけでも細かくカテゴリ分けされていますが、それはまたの機会に・・・。
主な車両はプリウス、BRZなど。
マザーシャーシ(JAF-GT300-MC)
GT300独特の規格であり、特徴でもあるマザーシャーシ。
具体的には、スーパーGTの運営母体であるGTAが作成、販売しているCFRPのシャーシであり、こちらを使用して車体を制作することがこの規格の大きな特徴です。
また、エンジンの搭載位置の指定やハイブリッドの使用禁止、同一形式のロールケージ装着など、様々な項目が義務付けられており、これによってイコールコンディションとなります。
主な車両はトヨタ86MCやロータスエヴォーラなど。
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JAF-GTやマザーシャーシについてもっと知りたい人は、以下の記事も読んでみてください。
FIA-GT3も良いけれど・・・JAF-GTもカッコいい!2016年スーパーGT300クラスのJAF-GT車両まとめ。
FIA-GT
FIA(国際自動車連盟)が定めている世界共通の規格です。
非常にざっくり申しますと、昨今各メーカーがこぞって開発しているGT3車両がこちらに該当します。
その他にもGT1,GT2規格もありますが、現在GT300に出れるのはGT3規格のみです。
GT3車両は販売したままレースに出ることができるようなパッケージで、参戦のコストを抑えられることが特徴。
また、市販時点で500馬力を超えたモンスターであることが多く、他の規格よりもストレートスピードが比較的速いので、次の項目であるBoPによって苦しめられているクラスでもあります。
主な車両はポルシェGT3、ランボルギーニウラカンGT3、メルセデスベンツAMG-GT3など。
FIA-GTやGT3マシンについてもっと知りたい人は、以下の記事もあわせてどうぞ!
あなたはどのマシンで参戦する??世界中で大活躍のFIA-GT3車両カタログ。
最新FIA-GT3車両カタログ!スーパーGTに参戦予定のFIA-GT3車両をまとめて見た。
さて、駆け足でお送りしてきましたが、クラスごとにこれだけの規格の車両がいる中でレースをしていくわけで、多少の性能の偏りはどうしても発生してしまいます。
でも、スーパーGTを見ていると、あまり連勝という姿は見ないですよね?その理由が、ウェイトハンディや、BoP等のルールによるものなのです。
BoPってなんだ?
スーパーGTを観戦していると、実況や解説で「BoP」という単語をよく聞きます。
こちらは「Balance of Performance」の頭文字をとったもので、日本語で言うと「性能調整」ということになります。
本記事のクラス分けで書きましたが、GT300クラスはいろんなメーカーから様々な性能のマシンが参戦しています。
その中でも、JAF-GTは300馬力ぐらいなのに、GT3は500馬力前後だったりと、この時点でかなりの性能差。まともに戦ったら勝ち目がないかもしれません。
そこで、車体性能の均一化を図るために、各車ごとにBoPが行われるのです。
BoPの調整方法は?
調整するって言ったって、一体何をしているのか?
主に行われている調整としては、ウェイトの追加、リストリクターの装着、最低地上高の設定になります。
車体を重くすることや、車高を上げることで運動性能を下げ、リストリクター(燃料や空気の量を制限します。本記事でも後述しますね)の装着によって出力を下げることが主な内容です。
これらを各マシンごとに設定することによって、可能な限りイコールな状態に保っています。
誰が決めているの?
このBoPも、一部だけ甘かったり厳しかったりすると、もうレースになりません。
そこで公平を規すために、かなりフェアだと評判の高い、海外の「BLANCPAIN GT」シリーズのプロモーター「SRO Motor Sports Group」にBoPの策定を依頼。
ただし、そのまま持ち込んでも適合はしないため、GTAとSROで協議の上、スーパーGTにあわせてアレンジをし、策定しています。
これによって、可能な限り車体性能を公正にしているはずですが、まだまだ問題点もあるようで、テストの結果などで前評判がとても高かったランボルギーニウラカンGT3は2016開幕戦直前のBoPにより大多数が下位に沈んでおり、このままじゃ勝負権が無いのではないか?とまで言われているようです。
そもそも、昔は某カービデオで、ノーマルなはずの広報車が改造されていて、同じモデルの市販車より明らかに速かったり、かつての日本グランプリでは「みんなノーマルで出ようね!」という紳士協定を破って一社以外みんな改造車で出たり、自社の車を売るための最大の宣伝の場である以上、モータースポーツに政治的な力はつきもの。
もちろんそういったことが無いために、海外の規定を使用しているのだと思いますので、現時点でBoPが厳しいチームも、上位に上がってくることに大きく期待しましょう!
ちなみに、個人的な見解ですが、SNSなど、ネット社会が発達した現代では「ウソはすぐバレる」ので、そうそうできないとは思います。
そして、次はおなじみウェイトハンディ!
ウェイトハンディってそもそもなに?
レギュレーションやBoPで性能を近づけているとはいえ、やたらめったらに速いマシンが誕生してしまった場合、毎回同じマシン・チームが優勝することになります。
これではファンからしても「またあのチームか・・・」となってしまい、面白くないですよね?
一時期のF1がそうだったりしたことは置いておきますが、それを解消するために取り入れているルールが「ウェイトハンディ制」なのです。
こちらは、前戦までに獲得したシリーズポイントの1ポイントあたりに対して、2kgのウェイトがマシンに積まれていきます。
つまり、勝てば勝つほどマシンが重くなっていき、マシンの運動性能が下がってしまうわけです。
ウェイトってそんなに効果あるの?
なんだ2kgなんて大したことないじゃん!とお思いになるかもしれませんが、
スーパーGTではレースに優勝すると20pt(一部のレースでは25pt)が加算されるので、一番速かったマシンが次戦では2×20=40kgのウェイトを積まなければなりません!
グラム単位で頑張って軽量化するのがレースの世界なのに、40Kgも積んだら、もちろん勝つことは難しくなっていきます。
しかも、このウェイトは加算されていくため、ポイントを獲得すればするほど後のレースで勝つことが難しくなります。
だからこそ、スーパーGTでは毎戦めまぐるしく勝者が入れ替わるわけですね。
ウェイト50kgに対する燃料リストリクターの廃止
▲燃料リストリクター
ちなみに、昨シーズンまでは、ウェイトが50kgを超えると、燃料流量リストリクター(エンジンに入れるガソリンの量を制限する装置)を装着して、出力の制限を下げるというレギュレーションがありました。
こちらはウェイト50kgを積んだのと変わらない程度の出力制限となっており、65kgのウェイトであれば、実際は15kgのウェイト+燃料リストリクターの装備が義務付けられるシステムとなっていましたが、2016シーズンはこれを撤廃。
ウェイトは獲得ポイントから計算された数だけ積むこととなり、最大は100kgとなっています。
友人や家族と車で出かける際に、フル乗車だと車の動きが重いですよね?100kg積むって、それに近いことなのです。
ハンディキャップがもたらす効果とは?
たしかに、どんどんウェイトが積まれていくと、序盤勝ったマシンは勝負権を失いがち、最終戦の頃にはもう最後尾付近しか走れない可能性も出てきます。
しかし、シリーズチャンピオンがかかってくる後半戦には、このウェイトをひっくり返すルールがあります!
なんと、第7戦では、ウェイトの搭載は1ポイントあたり1キロとなるので、それまでに搭載していた量の半分になります!
(実際は50ポイント以上獲得していることが大半なので、きっちり半分ではないですが、それでも2~30kgの軽量化!)
さらに、最終戦は、全車それまでのウェイトハンディを全て降ろした状態で出走するルールとなっており、開幕戦と同様、本当のガチンコ勝負。
一年間戦ってきたマシンを、やっと本来の性能に戻して走れるのです。
スーパーGTでは、シリーズチャンピオンの決定は最終戦までもつれ込むことが多く、このウェイトハンディを下した最終戦は、これまでの鬱憤を晴らすかのように、チームも選手もギラギラして白熱したレースが見られます。
まとめ
こういった、各チームの実力を拮抗させるシステムがある故に、毎回勝者が目まぐるしく入れ替わり、エキサイトしたレースを見ることができるわけですね。
また、2015年のGT300のGAINER TANAX GT-Rのように、ウェイトを積んでいても、番狂わせできるぐらいに速いマシンが現れたりすることも!?
そして、シーズン中のBoP見直しもありえるので、今まで目立たなかったマシンが突然上位グループを快走する可能性も!?
レース後半になればなるほど、ウェイトが積まれます。
重くなっても速いのは、どのマシンなのか、それともこれを機に新たなマシンが頭角を現してくるのか、要チェックですよ!