90年代のハイパワーテンロクスポーツとは打って変わり、カタログスペックよりよく回るエンジンやハンドリングで2代目・3代目と好評を得たスズキ スイフトスポーツ。その初代モデルは俗に「テンゴ」とも呼ばれる1,500ccクラスエントリースポーツ群の1台でした。

 

Photo by Jeff

 

 

ジュニア世界ラリー選手権から生まれた、スイフトスポーツ

 

「スイスポ」ことスイフトスポーツの、初代デビューは2003年6月。

このスイスポが海外のJWRC(ジュニアラリー選手権)で活躍したというイメージはありますが、実はJWRC参戦の方が先で、2002年から参戦して好成績を残していたのは、海外仕様のラリーバージョン、イグニス・スーパー1600でした。

“ジュニア世界ラリー選手権(JWRC)参戦車両の技術とイメージを反映させ、専用の車体やエンジン、サスペンション等を採用したスポーティーモデルである。”

(スズキの2003年6月12日プレスリリース)

ただし、通常モデルの特別仕様車として内外装に特別装備を施すことが多いこの種のモデルで、初代スイスポは比較的「メーカーチューンド」的なモデルとして登場したのです。

内外装やローダウンされた専用サスペンションはもちろんのこと、通常の日本国内版スイフトには設定の無かった3ドアモデルに、専用チューニングの1.5リッターエンジンを搭載。

 

出典:http://www.monster-sport.com/mmsa/entry/about/introduction.html

 

これには当時、何かとワンメイクレースを開催していたスズキスポーツも目を付け、初代スイスポのワンメイクレースが行われました。

 

実質的にkeiのワイド版だった低価格車スイフトに、スポーツ性を持たせる

 

出典:http://monster-sport.com/faq/faq_hid.html

 

ベースとなった初代スイフトは2000年1月にデビューしたカルタス後継の低価格コンパクトカーで、ワゴンRプラスのプラットフォームに軽クロスオーバーSUV・keiのサイドパネルやドアを利用したボディを載せ、「実質的にkeiのワイド版」となっていました。

2代目以降のスイフトが「国際的に通用する高品質コンパクトカー」という高い志を持っていたのとは異なり、「軽自動車より安いコンパクトカー」だったカルタス後継の低価格車で、とにかく安い事が売りだったのです。

もちろんスポーティさとは無縁の車だったので、少し立派なバージョンが欲しければ、兄弟車のシボレー クルーズが販売されていたほどでした。

 

Photo by Rupert Ganzer

 

そこにスポーティな3ドアハッチバック、それも海外ラリーで活躍しているイメージを引っさげて登場したので、初代スイフトのイメージ向上には役立ったと言えます。

ただし、専用設計でカタログスペック上は当時の1.5リッターエンジン最強クラスと言えたM15A DOHC4気筒エンジンですが、「スポーツという割には上まで回らない」とあまり評価は芳しくなく、2代目以降のスイスポでは大きく改善しています。

 

時は国内モータースポーツ「スーパー1500」時代

 

出典:http://blog.jdcea.org/?m=200711

 

初代スイスポがデビューした頃のコンパクトスポーツと言えば、軽ホットハッチや90年代に黄金期を築いた1,600ccクラスのハイパワーテンロクスポーツがあらかた廃盤になっていた時代です。

しかしそこにエントリースポーツの新ジャンルとして1,500ccクラスのコンパクトカーが注目され、ジムカーナやダートラでは「スーパー1500」、ラリーでは「JN1.5クラス」が誕生し、テンロクならぬ「テンゴ」を育成しようという動きが盛んでした。

代表的なのは初代スイスポをはじめ、ホンダ フィットRS、三菱 コルト1.5c、マツダ デミオSPORT、トヨタ ヴィッツRS、さらに1.2~1.3リッターながら日産 マーチ12SRやダイハツ ストーリア / トヨタ デュエットも加わり、「群雄割拠」と言えたのです。

 

出典:http://mos.dunlop.co.jp/archives/rally/race-data/report_rally_2_20100507.html

 

車種も豊富で甲乙つけがたいコンパクトカーの戦いは見る者の目を楽しませ、その中で初代スイスポも定番の1台として活躍しています。

しかし、2代目スイスポが1.6リッター化されると同時にJAF公認競技が「1.6リッターを境とする」排気量ごとのクラス分けを採用したことで、結果的に不利な「テンゴ」は駆逐されてしまい、事実上コンパクトカーは2代目以降のスイスポ一色となる事に。

 

出典:http://mos.dunlop.co.jp/archives/rally/race-data/report_rally_8_20101105.html

 

その意味では、初代スイスポこそは他社の同カテゴリーコンパクトカーとモータースポーツでしのぎを削った、一番面白い時期の存在だったと言えるのではないでしょうか。

 

海外では「イグニス」名で活躍

 

Photo by Jeff

 

日本では初代からスイフトスポーツ、略してスイスポと呼ばれていますが、初代当時は前身のカルタスが海外で「スイフト」名で販売されていた都合で、「イグニス」を名乗っていました。

スイスポに相当する車種もイグニススポーツとして設定され、ラリーなどで活躍したほか、各マシンの性能差が少なくなるよう調整されたJWRC用マシン、「スーパー1600」仕様のイグニスが、前述のようにスイスポ登場以前から活躍しています。

また、メーカーワークスの参加は禁じられていたものの、サポートは自由だったスーパー1600にはスズキとスズキスポーツが積極的に関与し、2002~2003年と好成績を収めました。

 

Photo by André

 

2004年以降は規則上の都合で3ドアイグニスベースでの開発制限に達したため、シボレー クルーズと似た顔の5ドアイグニスにベース車を変更。

 

出典:http://monster-sport.com/faq/faq_hid.html

 

さらなる改良で2005年に2代目に交代するまで圧倒的な速さを見せつけ、スズキスポーツサポートマシンの黄色いボディカラーから「イエロー・バレット(黄色い弾丸)」と呼ばれ、その後の歴代スイフトスポーツもイメージカラーはイエローとなりました。

 

スーパー1600ベースのマシンは全日本ダートトライアルでも活躍

 

出典:http://www.suzuki-swt.com/backnumber/2003/dirttrial/index_3.html

 

なお、スーパー1600仕様は日本では公道を走れる仕様では無かったものの、全日本ダートトライアルではスイフトスーパー1600としてナンバー無しのカテゴリー(2002年までのC車両、2003年以降のSC車両)に出場。

 

出典:http://www.suzuki-swt.com/backnumber/2003/dirttrial/index_3.html

 

NA仕様でも十分な速さを見せましたが、圧巻だったのは4WDターボ化されたSC2クラス仕様で、ライバルのダイハツワークス勢を寄せ付けない速さを見せていました。

 

まとめ

 

Photo by Tarik Browne

 

市販車としては「エンジンが平凡すぎる」と辛口評価を受けていた初代スイフトスポーツですが、ライバルに対して決定打を得なかったがゆえに「スーパー1500」などテンゴスポーツという、一時流行った新ジャンルの隆盛に一役買いました。

スーパー1600としての活躍も良かったのですが、日本の日常シーンで見られる普通の初代スイスポの「実用車ベースのエントリースポーツによる等身大なとっつきやすさ」は、当時のエントリードライバーにとって魅力的だったのも確かです。

2代目以降のスイスポが「他のエントリースポーツとは完全に別格のワンメイク状態」になったことを考えれば、初代スイスポこそ本来あるべき姿だった、そう思う人もいるかもしれません。

 

あわせて読みたい

今こそ狙い目!スズキ・スイフトスポーツ(ZC32S/ZC31S)カスタム・デモカー21選

「オフ会」って聞いたことあるけど何してるの?スイフトのオフ会に行ってみた。

速いだけでなくオカワリ(買い替え)容易も条件!ダートトライアル定番車5選

[amazonjs asin=”B002KW544I” locale=”JP” title=”トランスフォーマー オルタニティ SUZUKI SWIFT SPORT バンブル チャンピオンイエロー”]

Motorzではメールマガジンを始めました!

編集部の裏話が聞けたり、月に一度は抽選でプレゼントがもらえるかも!?

気になった方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みいただくか、以下のフォームからご登録をお願いします!