スーパーカーや数億円することも珍しくないハイパーカーにカーマニアが魅力を感じるのは、性能もさることながらその美しいスタイリングも大きく影響してのこと。『世界でもっとも美しい車』の名を挙げさせればその名を上げる人も多い名車、アルファロメオ ティーポ33/2ストラダーレもそんな美しい1台です。

 

アルファロメオ ティーポ33/2ストラダーレ(4灯ヘッドライトの初期型) / Photo by Archivio Prototipi

レーシングカー、ティーポ33と並行開発された美しすぎる市販モデル

 

アルファロメオ ティーポ33/2ストラダーレ(4灯ヘッドライトの初期型)  / Photo by Andrew Basterfield

 

1960年代、アルファロメオはスポーツカーレースで後塵を拝していたポルシェ907などに対抗すべく、同様にリアミッドシップレイアウトのスポ-ツカーを開発しました。

それが1965年に登場し、特徴ある吸気口から『ペリスコピック(潜望鏡)』と呼ばれた、2リッターV8DOHCエンジン搭載のプロトタイプスポーツカー、ティーポ33/2です。

『33/2』の『2』の由来は第2バージョンとの意ではなく2リッターエンジン搭載の事で、後に進化して3リッターエンジンなどを搭載すると『33/3』などと名を変えていきます。

 

レーシングバージョンのアルファロメオ 33/2ル・マン / Photo by Eddy Clio

 

丸みを持つスパイダーボディのティーポ33/2は、フロントリフト(揚力)が大きすぎるという致命的な空力的欠陥により、ベルギーのフレロンで開催されたヒルクライムレースでの優勝(ゆえに最初の33/2は『フレロン』とも呼ばれる)を除けば、モータースポーツでの戦歴は成績不振に終わります。

そこでラジエターとオイルクーラーをボディ両サイドへ移設。

新たなフロントカウルを与えられて、抜本的な空力的解決を図ったバージョンが登場。1968年のデイトナ24時間レースでデビューウィンしたことから『33/2デイトナ』と呼ばれます。

さらにユノディエールの直線対策でロングテール化&垂直安定版を追加した『33/2ルマン』が、1968年のル・マン24時間レースで総合4位入賞。

以降最後の改良型で3リッター水平対向12気筒DOHCスーパーチャージャーエンジンの『33/SC12スパイダー』(1977年)となるまで長きにわたりアルファロメオの主力プロトタイプスポーツカーとして活躍しました。

ちなみに、ロードバージョンが登場したのは後に『33/2デイトナ』と呼ばれるバージョンが活躍していた頃で、33/2デイトナのロードバージョンというより、どうも並行して同時期に開発されていたようです。

 

初期の4灯ヘッドライト版と、北米規格に合わせた2灯ヘッドライト版

 

アルファロメオ ティーポ33/2ストラダーレ(2灯ヘッドライト版) / Photo by Yahya S.

 

ショートテールのクーペボディで『33/2デイトナ』のイメージを持つ『33/2ストラダーレ』は、1967年のトリノショーでデビューした後、市販に移されますが、その価格たるや975万リラで現在の日本円で言うと3億円相当。

ちなみに同時期のイタリアンスーパーカー、ランボルギーニ ミウラが770万リラ、ハイパフォーマンス版ミウラSVで880万リラ、SVJでさすがに1300万リラでしたから、33/2ストラダーレは現代で言えば数億円単位が珍しくない『ハイパーカー』だった事がわかります。

搭載されていたエンジンはレーシングバージョンと同じ1,995ccV8DOHCエンジンを270馬力から230馬力にディチューンされたもの。

ボディもFRP製からアルミ製に変更されたとはいえ、車重が700kgほどと軽かったので公称最高速260km/h0-100km/h加速は6秒未満。

ボディはさすがにレーシングバージョンと各部が異なりますが、バタフライドアは各部に大きく開いたインテークやエアアウトレットがとってもレーシーで、絶妙なうねり方の曲線美は『世界一美しい車』との賛辞を送る人も数知れません。

ごく初期型は丸目ヘッドライトを縦に2灯ずつ左右に配置した4灯式でしたが、主要市場として想定した北米ではあまり低い位置のヘッドライトが許されなかったため、後に高い位置のみ残した2灯式へとフェイスリフトが行われました。

その他、個体によってエアインテークやエアアウトレットの位置が異なるのは、ハンドメイドゆえのことで、むしろ全く同じ33/2ストラダーレがあるのかは定かでありません。

 

変わり種33/2も多数あり

 

ベルトーネがティーポ33/2ストラダーレベースで作ったCarabo / Photo by Archivio Prototipi

 

何しろレーシングバージョンに対するロードゴーイングバージョン、それも超高価なハイパーカーなのでモータースポーツで目立った実績の無い33/2ストラダーレですが、内装は質素なライトウェイト版と豪華なデラックス版があったようです。

しかしそれ以上に33/2ストラダーレはイタリアンデザインを手がける各カロッツェリアの創造力をくすぐり、数多くのコンセプトカーが作られています。

 

ピニンファリーナ作のアルファロメオ ティーポ33/2クーペスペチアーレ / 出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Alfa_Romeo_33_Stradale

 

ジウジアーロ作のアルファロメオ イグアナ / 出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Alfa_Romeo_33_Stradale

 

ピニンファリーナ作のアルファロメオP33クネオ / 出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Alfa_Romeo_33_Stradale

 

ベルトーネ作のアルファロメオ ナバホ / 出典:https://en.wikipedia.org/wiki/Alfa_Romeo_33_Stradale

 

これらはいずれも市販には結びつきませんでしたが、後のスポーツカーデザインに大きな影響を与えており、特にイグアナのデザインは後のデロリアン(これもジウジアーロのデザイン)で結実したとも言われています。

 

主なスペックと中古車相場

 

アルファロメオ ティーポ33/2ストラダーレ(4灯ヘッドライトの初期型) / Photo by Andrew Basterfield

 

アルファロメオ ティーポ33/2ストラダーレ 1968年式

全長×全幅×全高(mm):3,970×1,710×991

ホイールベース(mm):2,350

車両重量(kg):700

エンジン仕様・型式:水冷V型8気筒DOHC16バルブ

総排気量(cc):1,995

最高出力:169kw(230ps)/8,800rpm

最大トルク:206N・m(21.0kgm)/7,000rpm

トランスミッション:6MT

駆動方式:MR

中古車相場:皆無

※同車は少量生産ハンドメイド車なので、上記はあくまで参考値

 

まとめ

 

アルファロメオ ティーポ33/2ストラダーレ / Photo by Brian Snelson

 

一説には18台が生産されたとも言われているアルファロメオ ティーポ33/2ストラダーレですが、実際には33/2レーシングバージョンより100mm長いホイールベースを持つ33/2ストラダーレ用シャシーが、各カロッツェリアによるコンセプトカーを含め何台に使われたのかは、明らかではありません。

いずれにせよ実際に公道を走った33/2ストラダーレは非常に希少で、現在オークションなどに出品されれば、その落札価格は軽く10億円を超えるのではとの事。

なお、日本でも少なくとも1台はナンバーを取得して公道を走っていたようで、これも一説には2台のみ上陸したと伝えられています。

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