世界一過酷な公道オートバイレースとして有名なマン島TTレース。その中の『TT Zeroクラス』に、2012年から参戦し、現在3連覇中のTEAM 無限。その、オリジナル電動バイクレーサーである”神電”に迫りたいと思います。

©ChikaSakikawa

マン島TTレース(アイル・オブ・マン・ツーリスト・トロフィー)ってどんなレース?

出典:http://www.cycleworld.com/

マン島TTはイギリス王室属国で、イギリスのグレートブリテン島とアイルランドアイルランド島の間に位置する「マン島」で行われる公道レースです。

第1回目が開催されたのは1907年。レース専用のサーキットではなく、一般公道を封鎖して行われるため、転倒やコースアウトを喫したライダーは、民家の石壁や樹木などに激突する事も多いです。

そのため重症や死亡事故が絶えない事から『世界一危険なバイクレース』としても有名なレースとなっており、世界中から命知らずのライダー達が集結する事でも注目されています。

1949年からは、FIM ロードレース世界選手権(WGP)のイギリスGPとしてWGPの重要な1戦となっていた事もありました。

しかし、整備が行届いたサーキットでの走行に慣れているGPライダー達からは敬遠され、安全性の問題からマン島でのイギリスラウンドのみ辞退するライダーが増えていきました。

その事により、1976年を最後にWGPのスケジュールから外れる事となったのです。

その後は市販車ベースのマシンによるレースとなり、一台ずつのタイムアタック方式で、スーパーバイクTTクラスは6周、セニアTTクラスは4周で争われ、毎年5月下旬から6月初旬にかけて開催され続けています。

 

”神電”が参戦する『TT Zeroクラス』

出典:http://global.rk-japan.co.jp/info/isle-of-man-tt-2015-racing-and-results/

神電が参戦しているカテゴリーである『TT Zeroクラス』は、伝統有るマン島TTの中では一番新しいクラスで、正式に始まったのは2010年からとなっています。

世界的な環境問題への関心の高まりから、環境PRのイベントとしてスタートしたゼロエミッションカテゴリ―で、出走するバイクの条件は「CO2の排出量がゼロ」。

実質、電動バイクのカテゴリとして、バッテリー容量を考慮し1周(60.7㎞)のみのタイムアタック方式で争われるクラスとなっています。

 

TTZeroクラス3連覇達成の神電を大解剖!

©ChikaSakikawa

そんな”神電 伍”が、先日開催された東京オートサロン2017の無限ブースに登場しました。

しかも、ただの実車展示だけではなく、トークショー内で実際にマシンセットダウン&セットアップを実演!

ガソリンで走る、レシプロエンジンバイクの内部を見る機会はあったとしても、電動レーサーの内部を見る機会はかなり貴重ではないでしょうか。

まずは、サイドカウルを外します。

神電のサイドカウルを外した姿はこちら。©ChikaSakikawa

サイドカウルを外したレシプロエンジンバイク©ChikaSakikawa

レシプロエンジンバイクのサイドカウルを外すと、エンジンや電装系など色々なパーツがむき出しになり、ごちゃっとした印象になりますが、電動レーサー”神電”はかなりシンプル。

まだカウルをかぶってるんじゃないの?と疑うほどのビジュアルです。

右手前のmaxellのロゴが入った黒い箱がリチウムイオン電池。©ChikaSakikawa

それもそのはず。電動レーサーの中心の大部分を占めるのは、マクセル製のラミネート形リチウムイオン電池なのです。

カーボン製モノコックのフレーム兼バッテリーケースの内側は本当に電池のみが入る為の空洞となっています。

©ChikaSakikawa

ちなみに、モノコックフレームと言うのは、外装とフレームが一つになっている構造で、一般的なレシプロエンジンバイクのように骨組みと言うべきフレームが存在しないのです。

最近よく耳にする「電動バイク」という言葉。何となくイメージはできるものの、ガソリンか電気という原動力の違いぐらいに考えている方も多いと思います。

しかし、実際に構造の違いを目の当たりにすると、その2つは全くの別物で、この3連覇を遂げた”神電”という挑戦が、どれほど大変なものか思い知らされる。そんなデモンストレーションなのでした。

 

まとめ

 

TEAM無限はこの挑戦を通して、実際の製品開発にフィードバックし、『 役に立つ・楽しめる・手が届く』ものを作る事を目指しているそうです。

そして、その為の挑戦の舞台として選んだのが、世界一過酷な公道レースである”マン島TT Zeroクラス”。

2014年から3連覇を果たしたものの、エンジニア達の目標値に達する事ができなかったこれまでのレースを反省し、今年の6月7日の決勝では、その目標値を達成した上での4連覇を目指します。

「ただ優勝するだけ」では満足しない、攻めの姿勢崩す事を知らない神電の戦いに、これからも注目していきたいですね。