今年から新しく始まった女性ドライバー同士によるレースカテゴリー「KYOJO-CUP」。多くのファンや関係者が注目し、いきなりもりあがりをみせた開幕戦は想像以上の激戦に。特にトップ争いは0.8秒差でチェッカーを受ける接戦となりました。優勝は小山美姫、2位は今橋彩佳。奇しくも昨年FIA-F4のチームメイト同士でのワンツーとなったのだが、レース後の両者の表情は、明暗が分かれるものでした。

©︎Tomohiro Yoshita

 

小山美姫…冷静にピンチを乗り越え有言実行、“0.8秒差の”ポール・トゥ・ウィン

 

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今週末は事前にまとまった練習走行や、全ドライバーが集まっての事前テスト等はなく、正直ぶっつけ本番という感じで午前に行われた公式予選。

目まぐるしくトップが入れ替わる中、ポールポジションを獲得したのは、小山美姫。

今年はFIA-F4やN-ONE OWNER’S CUP、さらにスーパーカーレースと、様々なカテゴリーにエントリー。以前から、「男と勝負をして、その中で勝ちたい」と言っていただけに、このKYOJOでは優勝が絶対条件と決めて臨んでいた。

 

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その中で2番手以下に0.5秒の差をつけてのポールポジション。最低限確保しなければいけないポジションはキープしたが、意外にも内容面では納得がいっていなかった様子。

「(ポールポジションのタイムについては)全然ダメですね。ラップタイムは常にサインボードで出してもらっていたのですが、“2分4秒4じゃダメだろう~”と思いながら、走っていました。

「富士はコンディションの影響でタイムが変わりやすいですが、3秒台には持っていきたかったですね。大丈夫かなぁ?と思って走っていたら最終ラップに“P1”のサインが出たので、良かったなと思いました」

彼女自身、男女関係なく同じフィールドで戦えることがモータースポーツの魅力だと感じ、今もFIA-F4などに積極的に参戦し上位を目指している。

そのため、KYOJOに関しては優勝が絶対条件という気持ちで臨み、その中でのポールポジション獲得でした。

 

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このまま、決勝の小山の独走優勝か?と思われたが、思わぬ展開が待ち構えていた。

スタンディングスタートで始まった7周の決勝レース。

ライバルのダッシュも良く、1コーナーを通過した頃には、小山のマシンは2番手集団に飲み込まれる形に。

一時は3ワイドになるバトルとなり、先頭に立ったのが今橋でした。

 

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いきなり追いかけていく展開となった小山。しかも序盤は今橋の方がペースが良く、最大で1.5秒近く差が広がり、予選からは一転し今橋有利という流れに。

しかし、小山は冷静に状況を見極め、後半での逆転を狙います。

そして5周目に入って今橋との差がつまり始めると、小山もリズムをつかみ始め、トップ攻略にとりかかりました。

トップ快走をなんとか守りたい今橋も、必死にブロック。特に後半セクターではサイド・バイ・サイドになり、わずかに接触するシーンも!最終的にファイナルラップに入るメインストレートで横に並びかけ1コーナーでパス。トップを奪い返し、そのままフィニッシュ。

しっかりと有言実行を果たし、開幕戦のウィナーとなりました。

ただ、内容を見ると終始2番手でファイナルラップに入ってのトップ返り咲き。一見苦戦したかのように見えたが、ほぼ計算通りの展開だったという。

 

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「スタートで、(ライバルたちが)横にくるのは想定内だったので、落ち着いて対処しました。自分の方が速いというのは分かっていたので、冷静にいこうと思っていました」

「(今橋選手とのバトルでは)やっぱり、ドライバーとして引けない部分もあるので、ちょっと際どいところもありましたけど、最後は着実にいける場所でいこうと思って逆転しました」

見事、宣言通り優勝で終えた小山だが、それに対して安堵の表情はほとんどなく、すでに次のレースを見据えていたのです。

「もう次の(レースの)ことを考えています。終わった瞬間から、次のスタートに向けてはじまっているので」

この週末は終始、強気なイメージが際立っていた小山。それに見合うだけのパフォーマンスを発揮し、決勝レースでもしっかり帳尻を合わせてトップへ返り咲き。

だが、それでも満足せず次へ向かおうとしている姿が、改めて小山美姫らしいなという部分でもありました。

ちなみに、今回は優勝賞金の30万円だけでなく、ポールポジション賞(3万円)、ファステストラップ賞(3万円)も獲得。合計36万円を手にしたのだが、その使い道に関しては「F4の参戦資金に回します!」と即答。

本当に最後まで貪欲に上を目指す姿勢には、脱帽でした。

 

小山が完全に主役となったKYOJO開幕戦だったが、その裏で最後まで彼女を苦しめる走りを見せたドライバーもいた。それが今橋彩佳だ。次のページでは彼女の目線から今回のレースを振り返る。