1990年代に盛り上がったステーションワゴンブームの初期、同クラスのラインナップを持たずに苦戦した三菱が、8代目ギャランベースで久々に復活させたステーションワゴンがレグナムでした。スバルやホンダ以外のライバル他社の苦戦を教訓に、ワゴン専用ボディとメカニズムは8代目ギャランと共通とし、強烈なVR-4も設定されたレグナムは、パワフルなスポーツワゴンを望むユーザーから熱烈な支持を受けました。

三菱 レグナム /出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/company/history/car/

8代目ギャランのステーションワゴン版「レグナム」登場

三菱 レグナム/ 出典:https://www.mitsubishi-motors.com/jp/company/history/car/

1990年代前半、初代スバル レガシィツーリングワゴンの大ヒットにより、それまでの「ライトバンに毛の生えたような乗用登録ワゴン」から一転、大ブームとなったステーションワゴンブームに国産車メーカー各社はこぞって参入します。

ところが、当時の三菱は4代目ギャランを最後に一時期1.6~2リッター級のミドルクラスバン/ワゴンを一旦廃止してしまい、「肝心な時に売る車がない」という状態に陥っていました。

そこで急遽、1994年8月に7代目ギャランの海外仕様としてラインナップしていた5ドアハッチバックセダン仕様を「ギャランスポーツ」として投入。

RV風の大型バンパーガードも装備し、「GT-RV」というキャッチコピーで売り出したものの、ユーザーからは不評で1年3ヶ月ほどの短命に終わってしまいます。

しかし本命として8代目ギャランベースのステーションワゴンが開発されており、ギャラン店だけでなくカープラザ店でも販売する事から車名を「ギャランワゴン」とせず、「レグナム」として1996年8月に8代目ギャランと同時デビューさせました。

こうした経緯からレグナムは、8代目ギャラン、および1998年8月に追加されたカープラザ店向けギャランの兄弟車「アスパイア」と前半分のデザインやメカニズムはほぼ共通となっており、実質的にはギャラン/アスパイアのステーションワゴン版となっています。

当時ブームに乗って乱発された数々のステーションワゴンとは異なり、レガシィツーリングワゴンやアコードワゴンと同様、商用バン仕様を持たないステーションワゴンボディだった事から、「同デザインの商用モデルが存在するのを好ましく思わないユーザー」からは、レグナムも支持されました。

“GDI”エンジンと2.5V6ターボの強烈な”VR-4”がウケた

三菱 レグナム/ Photo by Aidan Cavanagh

商用バン仕様を持たない4ドアセダンの8代目ギャランと同仕様のステーションワゴンという事で、エンジンも同じく当時最先端メカニズムとして話題となった電子制御直噴エンジン、”GDI”の1.8リッター直噴仕様が搭載されます。

しかし、低燃費と高出力を両立した新世代エンジンとされたGDIでしたが、特に1.8リッター直4(4G93)モデルは、まだクオリティの低かった市販エンジンオイルではなく、専用オイルを頻繁に交換しないと初期トラブルが多発。症状が悪化するとディーゼルエンジンのようなガラガラ音すら発するほどで、燃費など経済性も期待外れで酷評されるという洗礼を受けることになりました。

後に追加された2リッター直4(4G94)や2.4リッター直4(4G64)仕様ではだいぶ改善されたものの、革新的なメカニズムをいきなり量販車へ投入することの難しさを改めて実感する結果となりましたが、当時の三菱は「GDI CLUB」などのステッカーを作ってGDIエンジンを盛んに宣伝しています。

一方で、やや問題のあったGDIに対し、本来三菱が得意とする「パワフルなターボエンジンによる4WDスポーツモデル」として、当時の自主規制上限である280馬力を発揮する2.5リッターV6ツインターボを搭載した「VR-4」は、レガシィツーリングワゴンGTに匹敵するパワーに加え、余裕ある排気量により最大トルクを向上。三菱らしいスポーツワゴンとして好評でした。

VR-4はさらに、同時期にデビューしたランサーエボリューションIVと同じくリアデフには電子制御式の左右駆動移動制御装置「AYC]を装着し(後期型タイプVを除く)、ランエボと同等に旋回性能を向上さたハイテク4WDでもあります。

このAYCはランエボIVのものと同様、初期の耐久性や信頼性には難があり、すぐにトラブルが出なかった個体でも、経年劣化によるハイドロリックポンプの故障でAYCが動作しなくなる問題を抱えていましたが、デビュー当時はランエボ以上にパワフルで、走行性能の高いスポーツワゴンというイメージを高めるのに大きな役割を果たしました。

ライバルのレガシィに比べれば3ナンバーボディにV6エンジンと、やや大きくて重いという面はあったとはいえ、それを低回転から重厚なトルクで補っても余りあるレグナムVR-4は、まさに三菱のGTらしいワゴンです。

主要スペックと中古車価格

正面から見ると8代目ギャランそのものな三菱 レグナム /出典:https://www.favcars.com/photos-mitsubishi-legnum-1996-2002-57621.htm

三菱 EC5W レグナム VR-4 1996年式
全長×全幅×全高(mm):4,710×1,740×1,450
ホイールベース(mm):2,635
車重(kg):1,530
エンジン:6A13 水冷V型6気筒DOHC24バルブ ICツインターボ
排気量:2,498cc
最高出力:206kw(280ps)/5,500rpm
最大トルク:363N・m(37.0kgm)/4,000rpm
10・15モード燃費:-
乗車定員:5人
駆動方式:4WD
ミッション:5MT
サスペンション形式:(F・R)マルチリンク

 

(中古車相場とタマ数)
※2021年1月現在
50万~79.8万円・4台

2.5リッターV6ツインターボで豪快に走り去った、一代限りのスポーツワゴン

三菱 レグナム /Photo by Andrew Smith

2.5リッターV6ツインターボ「6A13」の豪快な加速が魅力だった「VR-4」をイメージリーダーとし、GTスポーツワゴンとして人気だったレグナムですが、90年代型のハイパワーユニットが厳しい排ガス規制によって2002年に相次いで消えていくと、6A13ターボも廃止されてしまいます。

ベース車の8代目ギャランはそれでもしばらく販売されていましたが、よほどVR-4に存在意義がかかっていたと見えて、レグナムの方は6A13ターボ、そしてVR-4と運命をともにするように、2002年12月で販売を終了。

三菱のステーションワゴンはそれ以降、ランサーセディアワゴンがしばらく引き継ぎ、スポーツワゴンとしてもランエボIXベースの「エボワゴン」「エボワゴンMR」が登場しますが、迫力と重厚感あるボディで豪快な加速が最高なミドルクラス・スポーツワゴンは、レグナムを最後に作られていません。

それゆえ中古車でもVR-4を中心に貴重なモデルとして人気が出たものの、今や市場からタマ数も尽きかけており、販売終了から20年とたたずにレア車の仲間入りをしようとしています。

今後の三菱で、あるいは三菱でなくとも国産車メーカーから同種のスポーツワゴンが登場しそうにない事を考えると、現在所有している、あるいは今後運良く入手できたユーザーは、まだラインナップが豊富で元気だった頃の三菱が残した遺産だと思い、大事に乗って欲しいところです。

 

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