イタリアンバイクの至宝といえるドゥカティ916。”バイクデザイナーの鬼才”と呼ばれるマッシモ・タンブリーニにより設計された916は、多くの二輪メーカーに影響を与えました。しかも、デザインだけでなく速さも最高レベルであり、スーパーバイク世界選手権では絶対的なチャンピオンマシン。そんな916シリーズのレースでの活躍を中心にその凄さをご紹介します。
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世界で最も美しいバイクとされたドゥカティ916
世界で最も美しいバイクの1台である、ドゥカティ916。
1994年にデビューした916は、それまであったバイクとは一線を画すスタイルで一気に世界中へ知れ渡り、多くの二輪車メーカーがこぞって916を見本にスポーツバイクをデザインしていきました。
しかし、中にはイギリス人モーターサイクルジャーナリストのケビン・アッシュ氏のように『過去20年の中で最も影響力のあるマシンの1つ』と評価しつつ、ホンダ・NR750からの派生デザインであるという指摘の声も。
たしかに、ヘッドランプ形状や片持ちスイングアーム、シートカウルのなかにマフラーを配置したあたりは916とNR750は共通ですが、クロモリトラスフレームを採用したことで狭い車幅や高い重心位置を感じさせるシート位置の高さはドゥカティスタイルの美学といえると思います。
ドュカティ851から始まったSBK最強伝説
スーパーバイク世界選手権(SBK)が始まった1988年、ドゥカティは初めて水冷4バルブエンジンを搭載した851を投入し、マニュファクチャラーズランキング5位を獲得。
そして、翌1989年にはフランス人ライダーのレイモン・ロッシュがランキング3位となり、マニュファクチャラーズランキングも3位まで上昇。
1990年にロッシュがシリーズタイトルを獲得すると、ドゥカティは念願のマニュファクチャラーズランキング1位に!!
その後1991年、1992年はアメリカ人ライダーのダグ・ポーレンがシリーズランキング1位、ロッシュが2位を獲得するなど、躍進を続けました。
そんな1992年、そして1993年のマシンは888。
851に比べ性能アップはしたものの、1993年にカワサキZXR750Rに乗るアメリカ人ライダー スコットラッセルにシリーズタイトルを奪われてしまいます。
そこで、ドゥカティは最強の名を後世に語り継がれることになる916を投入するのです。
デザイナーは鬼才マッシモ・タンブリーニ
Massimo Tamburini ontwierp 2 toonaangevende Italiaanse modellen. pic.twitter.com/CiAc2Rn7M1
— La Vita Italiana (@LaVita_Italiana) 2013年3月29日
916の設計はイタリア人デザイナーのセルジオ・ロビアーノとバイクデザイナーの鬼才マッシモ・タンブリーニが担当。
当時のドゥカティはイタリアのバイクメーカー・カジバ(CAGIVA)の傘下であり、ロビアーノとタンブリーニの二人はサンマリノにあるカジバ研究センターに所属していました。
そして日本メーカーのスポーツバイクに勝つために従来の888から排気量アップと軽量コンパクトな車体を目指して、バイク設計の自由度が高いクロモリトラスフレームを採用し、エンジンは888ccから916ccまで排気量をアップさせます。
当時SBKに参戦していたドゥカティワークスチームは、走らせる916マシンを『916SBK』と名付けて初年度は955cc、2年目で996ccと排気をアップさせ、レギュレーション上の最低重量制限である152kgまで軽量化させる事に成功しました。
日本メーカーを圧倒させた速さ!もはや勝利は使命であった
916のSBK投入初年度となった1994年、イギリス人ライダーのカール・フォガティが前年度チャンピオンのラッセルを抑えてシリーズチャンピオンを獲得。
翌1995年はフォガティ1位、チームメイトのトロイ・コーサー2位と、ランキングトップ10以内にドゥカティのマシンが5台ランクインし、ライバルとなる日本メーカーはその速さに為す術がありません。
そしてコーサーは1996年にシリーズチャンピオンを獲得。
フォガティは1998年、1999年にもシリーズタイトルを手にし、通算4度のシリーズチャンピオンとなったことで『帝王』と呼ばれるようになりました。
その後、916は1998年に排気量アップした『996』、2002年に『998』へと変わっていきます。
しかし、年々変貌していく日本メーカーのスポーツバイクとは対照的に、996/998の設計・デザインは916を継承していたため、ベースマシンが如何に優れていたかをSBKの場で証明する結果となったのです。
ドゥカティ916の魅力を引き出したスペシャルモデル
ドゥカティ916セナ
F1ドライバーの故・アイルトン・セナはドゥカティの熱烈なファンであり、生前はドゥカティのオーナーだったクラウディオ・カスティリオーニと友人でした。
そのためセナがレース事故でこの世を去る直前に、916のセナスペシャルモデルの生産が計画されていたのです。
そしてセナの死後、ドゥカティは1995年に『916 SENNA』、1997年には『916 SENNA II』、1998年には『916 SENNA III』を限定発売し、その収益のすべてはNGO団体である『アイルトン・セナ研究所』へ寄付されました。
ドゥカティ998マトリックス
2003年に上映された映画『マトリックス リローデッド』をご覧になった方なら、女優キャリー=アン・モスが演じるトリニティがハイウェイをドゥカティ996で走り抜けるシーンを覚えているのではないでしょうか。
そして当時、その劇中で使用された996のレプリカモデルとして『ドゥカティ998マトリックスエディション』が限定発売されました。
深緑色にペイントされた998は、まさにトリニティが乗っていたドゥカティ996を彷彿させるもので、今となっては中古車でもほとんど見られない幻のバイクとなっています。
ドゥカティ916/996/998スペック・性能
スペック
1994年 ドゥカティ916 | 1999年 ドゥカティ996 | 2002年 ドゥカティ998 | |
---|---|---|---|
全長×全幅×全高(mm) | 2,050×685×1,090 | 2,095×690×1,090 | 2,030×780×1,080 |
ホイールベース(mm) | 1,410 | 1,410 | 1,410 |
シート高(mm) | 790 | 790 | 790 |
車重(kg) | 198 | 198 | 198 |
エンジン種類 | 水冷L型2気筒デスモドロミック8バルブ | 水冷L型2気筒デスモドロミック8バルブ | 水冷L型2気筒デスモドロミック8バルブ |
排気量(cc) | 916 | 996 | 998 |
ボア×ストローク(mm) | 94×66 | 98×66 | 107×58.8 |
圧縮比 | 11.0:1 | 11.5:1 | 12.3:1 |
最高出力(kW[PS]/rpm) | 83.8[114]/9,000 | 82[112]/8,500 | 89.7[123]/9,750 |
最大トルク(N・m[bhp]/rpm) | 90[9.1]/7,000 | 93[9.5]/8,000 | 97[9.9]/8,000 |
トランスミッション | 6速 | 6速 | 6速 |
タイヤ | 前:3.50×17 後:5.50×17 |
前:120/70 ZR17 後:190/50 ZR17 |
前:120/60 ZR17 後:190/55 ZR17 |
性能
1994年 ドュカティ916 | 1999年 ドュカティ996 | 2002年 ドュカティ998 | |
---|---|---|---|
最高速度(km/h) | 255.1 | 259 | 265 |
0-1/4マイル加速(秒) | 10.6 | 10.7 | 10.9 |
ドゥカティ916/996/998でのチャンピオン獲得ライダー
シーズン | ライダー | マシン | 表彰台回数 | 獲得ポイント数 | ||
---|---|---|---|---|---|---|
1位 | 2位 | 3位 | ||||
1994年 | カール・フォガティ | ドゥカティ916SBK | 10回 | 4回 | – | 305 |
1995年 | カール・フォガティ | ドゥカティ916SBK | 13回 | 6回 | – | 478 |
1996年 | トロイ・コーサー | ドゥカティ916SBK | 7回 | 5回 | 3回 | 369 |
1998年 | カール・フォガティ | ドゥカティ996SBK | 3回 | 6回 | 5回 | 351.5 |
1999年 | カール・フォガティ | ドゥカティ996SBK | 11回 | 6回 | 2回 | 489 |
2001年 | トロイ・ベイリス | ドゥカティ998SBK | 6回 | 6回 | 3回 | 369 |
まとめ
美しさと速さを兼ね備えたドゥカティ916は、今新車で発売したとしても遜色ないほどスタイリッシュで、唯一無二のカッコよさは二輪車史上重要な存在となるバイク。
中古車の数はかなり少なくなっており、中古車価格はこれからどんどん高騰していくでしょう。
これから916/996/998の中古車購入をお考えの方は、今以上のプレミア価格になる前に購入する事をおススメします。
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