常に限界が試され、メーカー同士が最新の技術を競い合うモータースポーツの世界。その最前線で「10年同じものが使われ続ける」こと自体が非常に稀ですが、トヨタのツインカムユニット「3S-G」エンジンは登場以来、なんと20年近くも第一線で戦い続けていました。今も多くのファンに愛され、数多くのスポーツカーに搭載されている3Sが、いかにレースやラリーで戦い、鍛えられたのか。振り返っていきたいと思います。

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スポーツツインカムの名機「3S-G」はこうして生まれた

出典:http://www.motorsportretro.com/2014/04/mr2-group-s/

1980年代、トヨタはラインナップの刷新に取り組む中で、高回転・高出力のツインカムヘッド搭載エンジンの次期型を開発していました。

AE86レビン・トレノに搭載された1.6L直4の名機「4A-G」とともに、新時代のスポーツエンジンとして生まれた「3S-G」エンジンもそのひとつです。

頑強なS型ブロックにヤマハ製のツインカムヘッドを組み合わせたこのエンジンは、モータースポーツの現場でも時代遅れとなりつつあった「4T-G」の後継エンジンとして歓迎され、登場後すぐに競技用エンジンとしての開発がスタートしていきました。

 

ラリーから生まれたレーシングエンジン「3S-G改」

3S-Gをベースにした競技用エンジンは、まず1984年にWRC参戦用グループBラリーカー「222D」搭載を目的として開発がスタートしています。

車体もエンジンも改造範囲が非常に広く、素材の変更や過給機の追加など、ほとんど「やりたい放題」開発が可能だったグループBのレギュレーションを生かし、トヨタは姿は似ていても、ほとんど別物のスペックを持つ「3S−G改」を作り上げます。

2.0Lの排気量で500psオーバーを発生するそのパワーと、「トヨタMR2」をベースとしたミドシップ4WDの組み合わせにより、222Dはライバルを駆逐し得るマシンに仕上がりつつありました。

しかし、安全性を理由にグループBカテゴリーそのものが消滅してしまったことで、3S-G改とともに活躍の場を奪われてしまったのです。

 

まだまだ登場する3S-Gエンジン。

20年以上使われたからこそ、様々なレーシングカーに搭載されているんです。

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