2019年12月5日、ヨコハマ グランド インターコンチネンタルホテル で行われた第5回 自動車事業者 KANAGAWA EXPO 2019。自動車事業者向けの情報交換会で、今後の自動車業界について真剣に考える事業者が集まり、情報や意見の交換を行いました。その中で、自動車業界で働く女性にフォーカスした基調講演がありました。クルマに関わる人にフォーカスしたメディアであるMotorzが、追わないわけにはいきません!
神奈川エキスポとは?
自動車事業者KANAGAWA EXPOは、自動車整備団体や行政との連携、情報の共有など、 職種を超えた積極的な繋がりを作り出すことで、”自動車業界の活性化を図る”ことを目的に、定期的に行われている情報交換会です。
コミュニティを強化することで、自動車業界のイメージアップにつなげ、適正な利益の確保や優れた人材の育成などに力を入れています。
そんなエキスポの中で、今回行われた基調講演、「女性エンジニアの挑戦~トンカチと私~」がMotorzにぴったりの、”クルマに関わる人にフォーカスした”内容であった為、突撃取材!
この基調講演では、現在自動車業界でも注目を集める女性エンジニアの現状について、実際に愛知県の老舗板金工場で働く若手エンジニア、藤井美悠紀さんが語ってくれました。
女性エンジニアの挑戦~トンカチと私~
藤井美悠紀さんは、平成6年生まれの25歳。
お父さんがクルマ好きで、カスタムなどを行っていた姿を見て興味を持ち、将来はスポーツカーに乗りたいと思ってMT免許を取得したそうです。
その後サーキットにドリフトを観に行ったことをきっかけにクルマ好きに拍車がかかり、ついに愛車 シルビアを手に入れました。
現在の愛車は2台のS15シルビアです。
どちらも自身で購入したクルマで、街乗り用とドリフト用の2台という内訳だそう。
休日はサーキットでドリフトをするのが楽しみで、ひとりで積載車でクルマを運ぶために大型免許まで取るという徹底ぶり!
これには地元の友達も驚いたそうです。
もともとは美容学校に通い、その後一度美容師として働いていましたが、とあるキッカケがあり鈑金工を目指すことに。
美容師時代に鍛えた手先の器用さや、ヘアアレンジが得意なことから、現在はエアブラシやカスタムペイントに興味を持っているそうです。
そんな藤井さんが勤めている会社は、「株式会社鈴木鈑金塗装(スズバン)」。
スズバンは、愛知県瀬戸市にある鈑金工場で、昭和30年8月創業の老舗です。
主にディーラーからの依頼を請け負っており、月間180台、その80%がBMWとのことでした。
藤井さんは何故、鈑金工を目指し、そして老舗であるスズバンを就職先に選んだのでしょうか?
何故、鈑金工を目指したか
元々は、美容師として仕事をしていた藤井さん。
漠然と「クルマに触れる仕事がしたい」と思ってたところ、鈑金工を目指す決定的な出来事がありました。
その当時乗っていた愛車のリアをぶつけてしまい、購入したショップに修理に出した時のことです。
無事に修理が完了し、手元に戻って来た喜びを感じたのも束の間。
テールランプをカスタムするために外したところ、なんと見えない部分が全く直っていなかったのです。
自分の大切な愛車を直すために信頼していたショップに預けたのに、期待を裏切られてしまった藤井さんは「だったら自分で直せるようになりたい!自分のような想いをする人を増やしたくない!」という想いから、鈑金工を目指すようになりました。
今の会社を選んだ理由|鈴木鈑金塗装との出会い
鈑金工になるなら、確かな技術力がある会社に行きたいと思っていた藤井さん。
鈑金工場に知り合いが居たわけではないので、まずは技術力がある会社を自ら調べて行動に移します。
4社ほどに電話をすると、
「女性だから、ごめんね」
「施設的にトイレが1個しかないのはかわいそうだから……」など、
「女性だから」という理由で面接の機会すら作って貰えなかったそうです。
そんな中、たまたま知ったスズバンは、実家のそばにあるうえに確かな技術を持った老舗。
藁にも縋る思いで電話をすると、電話を取った鈴木社長は「女性だからって特別扱いはしない」 と言い、面接をしてくれました。
面接では知識も経験も無いので、やる気だけをとにかくアピールし、その熱量を認めてもらって見事合格。
ようやく、鈑金工としてのキャリアが始まりました。
当然、入社してすぐ鈑金作業に携わったわけではなく、まずは基本であるバンパーの脱着等を習い、2年目でようやくフェンダーの鈑金、3年目からようやく大がかりな鈑金作業に携われるようになったそうです。
また、大きな会社であることから職人も多く、「職人それぞれのスタイルの直し方」が知れることも、スズバンを選んでよかった点だと話してくれました。
これからの目標
自分の中で思い切り頑張っていると思っていても、人に伝わらなければ意味がないと社長や上司から教わったという藤井さん。
だから、職人としての鈑金業務だけでなく、自分にしかできないことや気付きを施策に落とし込んで実行していくことで、自分らしさと最大限の努力を見せて行きたいそうです。
「愛車には思い入れがあるもの。
傷が付いたら悲しいし、長く乗りたいからこそ鈑金塗装に出してくれているはずなんです。
そんな愛車に長く乗れるよう、鈑金の力でオーナーのカーライフをチョットだけサポートしていきたい。」
そう語ってくれた藤井さんは、将来は独立して自分のお店を持つのが夢。
自身のクルマを修理に出した時のような悲しい思いを、誰にもしてほしくない。
そう考える藤井さんは、これからますます成長し、鈑金界を代表する女性エンジニアになるのではないでしょうか。
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