2ストスポーツモデルに多大なる進化を与えた、スズキRG250ガンマ。発売開始から約1年間で3万台を販売するという大記録を達成し、峠やサーキットで400cc4ストバイクをライバルに、果敢に挑んでいました。時代を先取りし、ワークスマシンをリアルに市販車に再現したレーサーレプリカは、バイクブーム真っ只中の日本だけでなく、海外でも本格派2ストスポーツの楽しさを広めていきました。

1986年式 RG250ガンマ・Ⅳ型 / 出典:https://www.motorcyclespecs.co.za/model/suzu/suzuki_rg250%2086.htm

 

スズキ RGシリーズ魁は空冷パラツインのRG250/Eだった

マルコ・ルッキネリ / © 2016 Dorna Sports SL. All rights reserved.

1970年代後半におけるモーターサイクルスポーツでのスズキの活躍は目覚ましく、1976/1977年にバリー・シーン、1981年にマルコ・ルッキネリ、1982年にバリー・シーンがWGP(ロードレース世界選手権/現在のMotoGP)500ccクラスで、シリーズタイトルを獲得。

毎レースでスズキ RGB500/RGΓ500 VS ヤマハ YZR500という構図のバトルが繰り広げられ、2ストレーサーバイク開発のノウハウをどんどん蓄積。

日本にバイクブームが訪れると、すぐにスズキはRG500のリアルロードレーサーレプリカの開発に従事します。

1980年式 RG250E / 出典:https://www.motorcyclespecs.co.za/model/suzu/suzuki_rg250E%2080.htm

 

まずは、RGシリーズの魁として78年にRG250が登場。

それは空冷2スト並列2気筒エンジンを搭載し、18インチのスポークホイールを履いたネイキッドスポーツモデルでした。

その後80年にはスポーツホイールから星形キャストホイールに変更した後期型モデル、RG250Eが発売されます。

派手なRG250ガンマと比べると地味で古めかしいスタイルに感じますが、125cc並みのコンパクトな車体にバックステップが装着され、オプションでコンチネンタルハンドルが選択可能。

車体の随所にレーシーな設計がみられ、カタログの表紙には『GPチャンピオンRGB500の熱き血潮を見事に受け継いで登場』と書かれるなど、十分なレーサーレプリカでした。

そしてRG250/Eが登場した後、2スト250ccクラスは水冷時代に突入します。

ヤマハRZ250(1980年8月)、RZ250R(1983年2月)、ホンダ・MVX250F(1983年2月)の順で登場したのちRG250ガンマ(1983年3月)が発売されたのですが、それまでの3台にはないGPレーサーを彷彿させるシルエットに、多くのライダーが釘付けになりました。

 

国内市販車初が多数採用されたパラガンことRG250ガンマ

出典:https://www.motorcyclespecs.co.za/model/suzu/suzuki_rg250%2083.htm

モデル名”RG250ガンマ”は、スズキのGP500マシンだったRG500ガンマを250ccまでスケールダウンさせた派生モデルです。

また、名前RGは”Racer of Grandprix”から由来しており、ガンマ(Γ)は古代ギリシャ語で栄光や勝利を意味する『Γεραℓαω/ゲライロウ』の頭文字から名付けらています。

そんなRG250ガンマは水冷2ストローク並列2気筒ケースリードバルブエンジンを搭載していたことから、一部でパラレルツインエンジン ガンマを略して『パラガン』とも呼ばれていました。

さらにRG250ガンマは、国内市販車初のフロントフェアリング装着車で、量産市販車に初めてアルミフレームなどレーサーバイクの技術をそのまま採用したしただけでなく、250ccロードモデル初のセンタースタンドなし、市販車初のラバーマウントメーター、ジュラルミン製ステップなど、市販車初が盛り沢山。

車体設計にはRZ250/R、MVX250Fなどの2スト250ccクラスだけでなく、大排気量スポーツバイクにもなかった最先端技術を惜しげもなく詰め込み、当時の世に出ていた量産市販車で最もGPレーサーに近いものでした。

また、当時の発売価格は46万円で、ホンダMVX250Fで42万8,000円、RZ250Rで35万4,000円に比べれば強気の価格設定ですが、RG250ガンマに使った開発費や搭載しているパーツ単体での価格からすれば妥当と言えます 。

ちなみに、1983年の大卒初任給の平均が11万6800円、東京での最低賃金が時給452円だった時代だったので、新卒社会人やアルバイトをしている学生、フリーターにとって、新車での購入は躊躇する価格設定かもしれません。

しかし、『高額でも、時の最強マシンであれば売れる』という時代背景だったので、RG250ガンマは発売から1年で3万台のセールスを記録。

2017年度のスズキ軽二輪車新車販売台数が8,044台なので、RG250ガンマの売れ方は驚異的でした。

 

Ⅰ型からⅤ型まで1年ごとに大幅改良を敢行

RG250ガンマが生産された1983~1987年までの間は、84年にホンダ NS250Rと85年にヤマハ TZR250が登場した時期で、250ccや400ccクラスにおいて激しい開発競争が勃発。

不人気であれば、1年も経たないまま販売終了となってしまうほどでした。

しかし、強力なライバル車が出現しても、V型エンジンを搭載するRGV250ガンマが登場するまで、RG250は毎年改良が行われていたため、Ⅰ型からⅤ型まで存在します。

Ⅰ型の特徴

1983年式 RG250ガンマ・Ⅰ型 出典:https://www.motorcyclespecs.co.za/model/suzu/suzuki_rg250%2083.htm

Ⅰ型とⅡ型のRG250ガンマのリアビューは、テールランプから左右のリアウィンカーまでの配置がやっこ凧を逆さにした形状に似ていたことから『やっこだテール』とよばれ、シート形状はレーシーかつタンデム部も十分に確保。

オプションにはシングルシートカウル、アンダーカウル、レーサースタンドが設定されていました。

さらにフロントフォークには250ccモデルとしては初となるアンチダイブ機構ABDFを左右両方に装着。

ダブルディスクに対向2ポッドキャリパーが装着装着されて、タイヤにはフロントにミシュラン製16インチタイヤ、リアには18インチタイヤを履かせています。

Ⅱ型の特徴

1984年式 RG250ガンマ・Ⅱ型 / 出典:https://www.motorcyclespecs.co.za/model/suzu/suzuki_rg250%2084.htm

84年3月末にⅡ型を発売。

全体的にスリムな形状のボディスタイルにリファインされて、シャープになったことでホールド性を高めました。

また、ウインカーやテールレンズ、スクリーンにスモークカラーを採用し、Ⅰ型とはかなり差別化されています。

さらに、83年9月1日には市販車のフルフェアリングが認可されたため、Ⅱ型ではフルカウル仕様が登場!

スズキGP500マシンを彷彿させる黄色/白色のハーベーカラーが用意されました。

そんなⅡ型のフレームは、Ⅰ型に採用され、手作業で製造されアルミ製AL-BOXフレームからマルチリブ採用のMR-ALBOXフレームに変更。

フロントキャリパーは2ポッドから4ポットキャリパー化されて、リアタイヤは1サイズワイド&扁平化。

エンジンには吸気エアコントロールシステムEACSを装着し、さらにエンジン回転数を感知するコントロールユニットを搭載して、低速・中速域時にキャブレターへ装着されたインテークチャンバーを開放するシステムも追加されたことで、低回転域でもトルク感をアップさせました。

Ⅲ型の特徴

1985年式 RG250ガンマ・Ⅲ型 / 出典:https://www.motorcyclespecs.co.za/model/suzu/suzuki_rg250%2085.htm

85年3月に発売されたⅢ型は、フルモデルチェンジとなり、型式はGJ21AからGJ21Bに変更されてます。

埋め込み型のウィンカーが廃止され、やっこだこテールがなくなったことで、シート自体がスリムになり、シート高は50mm低くなりました。

そしてカウルは車体を覆うように表面積が広がり、Ⅰ型・Ⅱ型とは明らかに異なるスタイルへと変貌をとげています。

メーターは燃料計と水温計が追加装備され、ハンドルはトップリジット下に装着。

排気デバイスは『SAEC(Suzuki Automatic Exhaust Control)』が採用されて、低回転域においてⅡ型よりもさらに扱いやすくなり、Ⅰ型のようなピーキーさはほとんど改善されました。

Ⅳ型の特徴

1986年式 RG250ガンマ ウォルターウルフ・Ⅳ型 / 出典:https://www.motorcyclespecs.co.za/model/suzu/suzuki_rg250_wolf%2088.htm

Ⅳ型は86年2月発売され、改良内容も熟成期に入ったことで、パラガン最強モデルとされています。

さらにシリンダーのポートタイミングを変更し、高回転域でパワーを発揮する2ストロークエンジンのフィーリングを取り戻しで戦闘力をアップ。

RG250ガンマは多走行距離になるとフロントフォークスプリングがへタっていき、ハンドルを切った状態からフルダイブさせるとフロントウインカーとフロントフェンダーが接触するという問題点がありました。

しかし、Ⅳ型ではウインカーを変更してクリアランスを広げる対策が行われています。

Ⅴ型の特徴

最終モデルになるⅤ型では、フロントフォークがΦ38になり、リアタイヤが17インチに変更されて、前後タイヤがワイド化されました。

そしてⅠからⅣ型に装着されていたアンチノーズダイブ機構が廃止され、クランクシャフトの重量バランスを変更。

コンロッドの焼き入れを変更するなど、エンジン各部の精度を高める改良が成されています。

 

スズキ・RG250ガンマのスペック

1983年式 RG250ガンマ・Ⅰ型 / 出典:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%82%BA%E3%82%AD%E3%83%BB%E3%82%AC%E3%83%B3%E3%83%9E

1983年式 スズキ・RG250ガンマ【Ⅰ型】
型式 GJ21A
全長×全幅×全高(mm) 2,050×685×1,195
ホイールベース(mm) 1,385
シート高(mm) 785
乾燥車重(kg) 128
タンク容量(リットル) 17
エンジン種類 水冷2ストローク並列2気筒ピストンリードバルブ
総排気量(cc) 247
ボア×ストローク(mm) 54.0×54.0
圧縮比 7.5
最高出力(kW[hp]/rpm) 33[45]/8,500
最大トルク(N・m[kg・m]/rpm) 37.2[3.8]/8,000
トランスミッション 6速
タイヤ 100/90-16
110/90-18

まとめ

1986年式 RG250ガンマ ウォルターウルフ・Ⅳ型 / 出典:https://www.motorcyclespecs.co.za/model/suzu/suzuki_rg250_wolf%2088.htm

RG250ガンマは、RG500ガンマ、RG400ガンマ、RG125ガンマ、RG50ガンマと共に、2ストレーサーレプリカのフルラインナップを果たし、2ストブームの一時代を席捲していました。

その中核にあったRG250ガンマは、2ストレーサーレプリカのフルカウル化に一番乗りし、リアルレーサーレプリカへの道を切り開く革命児だったのです。

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