日本のレーシングライダーの中で「生きる伝説」「鉄人」と呼ぶにふさわしい方と言えば、伊藤真一選手ではないでしょうか。50歳となった2017年に全日本ロードレース選手権JSB1000クラスや鈴鹿8時間耐久レースに復帰。1987年のデビューから30年間、日本のトップライダーの1人として、二輪レース界に君臨し続ける伊藤真一選手についてご紹介します。

 

伊藤真一 2006

出典:http://www.honda.co.jp/JRR/race2006/rd05/photo/index3.html

 

 

伊藤真一選手ってどんな人?

 

伊藤真一 2006

出典:http://www.honda.co.jp/JRR/race2006/rd04/report/

 

伊藤真一選手は、宮城県岩沼市出身のレーシングライダーです。

生年月日は1966年12月7日で、現在51歳になりますが、2017年シーズンは全日本ロードレース選手権(以下:全日本)と鈴鹿8時間耐久レースに出場するなど今も現役で活躍中。

デビューからホンダ一筋で活動し、長期にわたりMotoGPマシン開発のテストライダーも務めました。

また、モーターサイクルレースのチーム運営を行う「有限会社コハラレーシングテクノロジー」と宮城県岩沼市の自動車販売店「GARAGE EDIFICE(ガレージ エディフィス)」の経営も行っています。

 

4輪ドライバーとしても活動

レーシングライダーである一方で、レーシングドライバーとしての活動も度々行っています。

2017年はスーパー耐久シリーズのST-TCRクラスにモデューロレーシングプロジェクトの97号車シビックタイプRで出場し、そのほかのレースにもポルシェ911GTSやホンダインテグラで出場して優勝を飾りました。

 

全日本の歴代最高峰クラス3つでチャンピオン獲得

全日本では歴代最高峰クラスである「500cc(1981~1993年)」、「スーパーバイク(1994~2002年)」、「JSB1000(2003年~)」の全てでシリーズチャンピオンを獲得し、また鈴鹿8時間耐久レースでは4度の優勝を飾っています。

その後2011~2016年の間は全日本へのフル参戦を休止し、ホンダのMotoGPマシン開発やブリジストンのタイヤ開発ライダーを務めていました。

さらに、2016年9月17~18日に開催された世界耐久選手権・第1戦ボルドール24時間耐久レースにホンダ系名門レーシングチームTSRから急遽参戦依頼があり、それを受け入れた伊藤選手は、準備期間が1週間もなかったにもかかわらず、決勝レースで5位と好成績をおさめています。

 

主なレース戦歴

 

出典:http://www.honda.co.jp/JRR/race2005/rd05/photo/index3.html

 

全日本ロードレース選手権

シーズン クラス マシン チーム シリーズランキング
1987年 Jr.250 RS250R クルーズ・レーシングチーム 6位
1988年 GP500 NSR500 ホンダ 2位
1989年 GP500 NSR500 ホンダ 2位
1990年 GP500 NSR500 ホンダ 1位
1991年 GP500 NSR500 ホンダ 3位
1992年 GP500 NSR500 ホンダ 8位

 

シーズン クラス マシン チーム シリーズランキング
1997年 スーパーバイク RVF/RC45 ラッキーストライク・ホンダ 5位
1998年 スーパーバイク RVF/RC45 ラッキーストライク・ホンダ 1位
1999年 スーパーバイク RVF/RC45 ラッキーストライク・ホンダ 4位
2000年 スーパーバイク RVF/RC45 ラッキーストライク・ホンダ 4位

 

シーズン クラス マシン チーム シリーズランキング
2003年 JSB1000 CBR954RR F.C.C. TSR 12位
2004年 JSB1000 CBR1000RR DDBOYS 4位
2005年 JSB1000 CBR1000RR ホンダドリームRT 1位
2006年 JSB1000 CBR1000RR ケーヒン・コハラ・レーシングチーム 1位
2007年 JSB1000 CBR1000RR ケーヒン・コハラ・レーシングチーム 18位
2008年 JSB1000 CBR1000RR ケーヒン・コハラ・レーシングチーム 7位
2009年 JSB1000 CBR1000RR ケーヒン・コハラ・レーシングチーム 7位

 

ロードレース世界選手権

シーズン クラス マシン チーム シリーズランキング
1993年 500cc NSR500 ロスマンズ・ホンダ 7位
1994年 500cc NSR500 HRCホンダ 7位
1995年 500cc NSR500 レプソル・ホンダ 5位
1996年 500cc NSR500 レプソル・ホンダ 12位

 

鈴鹿8時間耐久レース

シーズン マシン ペアライダー チーム 順位
1988年 RVF750 田口益充 SEEDレーシングチーム・ホンダ 7位
1991年 RVF750 ダリル・ビーティー ペンタックス・ホンダRT 7位
1992年 RVF750 辻本聡 チームHRC リタイア
1994年 RVF/RC45 武石伸也 am/pmホンダ 3位
1995年 RVF/RC45 辻本聡 チームHRC 2位
1996年 RVF/RC45 辻本聡 TRFホンダ 11位
1997年 RVF/RC45 宇川徹 ホリプロ・ホンダwith HART 1位
1998年 RVF/RC45 宇川徹 ラッキーストライク・ホンダ 1位
1999年 RVF/RC45 宇川徹 ラッキーストライク・ホンダ リタイア
2000年 VTR1000SPW 鎌田学 チーム・キャビン・ホンダ 8位
2003年 CBR954RR 辻本聡 F.C.C. TSR ZIP-FM Racing Team 3位
2004年 CBR1000RR 辻本聡 F.C.C. TSR ZIP-FM Racing Team リタイア
2005年 CBR1000RR 辻本聡 F.C.C. TSR ZIP-FM Racing Team 14位
2006年 CBR1000RR 辻本聡 F.C.C. TSR ZIP-FM Racing Team 1位
2007年 CBR1000RR 手島雄介 F.C.C. TSR ZIP-FM Racing Team 3位
2008年 CBR1000RR 辻村猛 F.C.C. TSR Honda リタイア
2009年 CBR1000RR 秋吉耕佑 F.C.C. TSR Honda 9位
2010年 CBR1000RR 玉田誠 ケーヒン・コハラ・レーシングチーム 2位
2011年 CBR1000RR 秋吉耕佑/清成龍一 F.C.C. TSR Honda 1位
2013年 CBR1000RR 山口辰也/渡辺一馬 TOHO Racing with MORIWAKI 7位
2014年 CBR1000RR 渡辺一馬/長島哲太 au&Teluru ・ Kohara RT 35位
2017年 CBR1000RR ダミアン・カドリン
/グレッグ・ブラック
Team SuP Dream Honda 42位

 

伊藤真一選手の歴史

 

伊藤真一 2006

出展:http://www.honda.co.jp/Racing/race2006/8hours/race/photo/index2.html

 

伊藤真一選手は1987年に宮城県角田市を拠点とする、クルーズ・レーシングから全日本Jr.250クラスに参戦し、シーズン3勝を挙げてランキング5位を獲得。

その走りがホンダワークス陣の目に留まり、1988年にワークス入りすると、GP500クラスにステップアップ。

ワークスマシンNSR500に乗ってレースを戦う事になりました。

当時21歳だった伊藤選手には、目立った大きな実績が無かったにも関わらずホンダワークス入りを果たしたことで「シンデレラボーイ」と呼ばれます。

いきなり500ccのワークスマシンを操れるのか、周りが不安視する中でGP500クラス参戦初年度から2年連続2位を獲得。

そして3年目となる1990年にはシリーズチャンピオンに輝くという、驚異の実力を示します。

その後、1993年からはロードレース世界選手権にフル参戦を果たし、最高シリーズランキング5位を獲得。

1997年からは全日本に戻る事になりますが、最高峰クラスが2スト500ccから4ストの4気筒750cc・2気筒1000ccエンジンのスーパーバイクに変更され、さらに2003年からは、4スト4気筒1000ccで争うJSBスーパーバイクに変更されるなど、大きなレギュレーション変更が度々なされる事に。

しかし、伊藤選手は変わらぬ速さを発揮し、スーパーバイククラスとJSB1000クラスで3度のシリーズチャンピオンを獲得するのです。

そして2011年7月31日の鈴鹿8時間耐久レースでは自身4度目の優勝を飾り、鈴鹿8耐の最年長優勝記録を44歳236日で更新。

年齢を重ねても速さを維持し続ける伊藤選手は、いつしか「鉄人」と呼ばれるようになりました。

 

伊藤真一選手の印象的なエピソード

 

伊藤真一 2011 鈴鹿8耐

出典:http://www.honda.co.jp/Racing/race2011/8hours/report/

 

2010年10月30・31日に鈴鹿サーキットで行われた全日本・最終戦でのJSB1000クラス参戦を最後に、2011年以降はホンダの開発ライダーとしての業務に専念する予定でした。

しかし2011年3月11日に東日本大震災が発生し、宮城県名取市在住だった伊藤選手も被災。

経営していたバイク店は営業困難な状況に追い込まれ、親類7人を津波で亡くしてしまいます。

そこで伊藤選手は全国のライダー仲間に声をかけて支援物資を集め、地元宮城県を中心とした被災地にいち早く救援物資を運び入れるなど復興支援活動を行いました。

また「被災者激励のため」として引退を撤回し、2011年全日本開幕戦に出場して3位表彰台を獲得。

第5戦スポーツランドSUGOにもスポット参戦しました。

 

まとめ

 

伊藤真一 2010

出典:http://www.honda.co.jp/Racing/race2010/8hours/photo/

 

伊藤真一選手は30年のキャリアの中で多くの優勝と名勝負を繰り広げ、我々を楽しませるレースを見せてくれました。

52歳となった2018年は、どのような活躍を見せてくれるのでしょうか。

2輪・4輪の両方から伊藤選手の活躍に期待していきたいと思います。

 

あわせて読みたい

[amazonjs asin=”490084361X” locale=”JP” title=”伊藤真一 PHOTO STORY 極限を生きたレーシングライダー真実の記録”]

Motorzではメールマガジンを始めました!

編集部の裏話が聞けたり、月に一度は抽選でプレゼントがもらえるかも!?

気になった方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みいただくか、以下のフォームからご登録をお願いします!