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初心者向けレース車両としても活躍!「スズキHA23Vアルトバン」

モータースポーツに適した車はいろいろありますが、新車デビューから10年を経た後「これは使える!」と脚光を浴びる車はそう多くはありません。平凡な商用車として生まれ、堅実ながら決して華やかなスポットライトを浴びる車種では無かった軽ボンネットバン、スズキHA23Vアルトバンが今や、初心者向け軽自動車レースには欠かせない存在になっているのです。

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新規格軽自動車初期の傑作、HA23Vアルトバン登場!

出典:https://ja.wikipedia.org/

軽自動車が現在の新規格に切り替わり、「新規格軽自動車」と呼ばれるようになったのは1998年10月のことでした。

エンジンの排気量上限(660cc)はそのままに、衝突安全基準を引き上げるためボディサイズの拡大が図られた事が一番の変更点となりました。

それに伴い、各社とも従来型軽自動車のモデルチェンジおよび新型モデルを続々と投入し始めます。まだスバルや三菱も独自の軽自動車を開発していた頃だったので、市場はにわかに活気を見せていました。

その中で、大型化やボディ剛性アップと引き換えに重量増を受け入れたライバルに対し、旧規格車からの重量増を最低限に抑えたスズキはその軽さで世間を驚かせたのです。

それだけでも走りの面ではかなり有利でしたが、さらに最軽量の商用3ドアボンネットバンにDOHCエンジンを搭載したHA23V型アルトバンを、2000年12月に登場させました。

パワーのあるターボ車よりも安価で、商用モデルのため税金も安かったので、軽量ホットハッチを歓迎する一部のマニアックなユーザーも存在しましたが、この時点では、後にレースで脚光を浴びるなどとは誰も想像していなかったと思います。

 

「新規格NA軽自動車限定のレース」発表

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転機が訪れたのは、HA23Vのデビューから10年の月日が流れた2010年のことでした。

この年、東北で「翌2011年から、新規格軽自動車のNA(自然吸気)エンジン車限定のレースを行う」というニュースが流れたのです。

しかも、初心者やこれまでレースに参入していなかったショップ、あるいはこれまでも軽耐久レースに参戦していたショップでも新たに参入しやすいように、中心となるクラスは改造範囲を大幅に制限されたナンバー付き車両としました。

足回りや安全装備以外は、ほぼノーマル。タイヤもハイスペックなSタイヤやスポーツタイヤではなく、セカンドグレードのラジアルタイヤに限定されたのです。

つまり、純粋にノーマル状態で走行性能に優れた車が有利なレギュレーションとなっていました。

それまで軽自動車レースといえば、改造に改造を重ねた新旧さまざま、というより旧規格車が大半を占めており、過激なハイパワーマシンや軽量化を追求したマシンが中心でした。

しかしノーマル同然の新規格軽自動車、それもNAエンジン限定となるとレースでの実績は乏しく、「さて、速いのはどれだ?」と各自頭をひねって各社のラインナップを見直す事となったのです。

 

もしかして最強?!一躍人気車種に

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そこで注目されたのが、パワフルなDOHCエンジン(一部グレードには可変バルブタイミング機構VVTもあり)を搭載し、3ドア商用ボンネットバンの中でも最軽量ボディなスズキHA23V型アルトバンでした。

しかし、NA仕様K6Aエンジンのカタログスペックでは54馬力と、同期のライバルであるダイハツL700V型ミラバン(EF-VE 58馬力)や最新のL275Vミラバン、そしてL235Sエッセ(いずれもKF-VE 58馬力)には劣っていました。

その反面、ライバルが最低でも車重680kgのところ、HA23Vは630kgと、パワーウェイトレシオでは勝っていたのです。

結果、2010年のシーズン終了とほぼ時を同じくして、レース参戦のためHA23Vアルトバンの5速MT車に人気が殺到したのです。

発売当初には想像もしなかったステージでHA23Vは、遅咲きながら人気車種の仲間入りを果たすのです。

 

東北660選手権から始まった伝説

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2011年7月23日、新規格NA軽自動車による待望の新レース「東北660選手権」はスポーツランドSUGOで無事開幕を迎えました。

同年3月11日の東日本大震災で日本各地が大きな被害を受けましたが、津波で水没した車を修理してエントリーするなど、執念で集まったマシンは合計24台。

そしてそのうち実に半数、12台をHA23Vが占めていたのです。

レースは上級者と初級者、AT車の3クラスが混走する形で行われました。上級者クラスでは激闘の末にダイハツL275Vミラバンが制する結果となりましたが、僅差で2位に飛び込んだのはHA23Vでした。

そして初級者クラスでは、見事にHA23Vがデビューウィンを飾りました。

改造制限の厳しいクラスでの勝利は、まさにHA23Vの持つ潜在的なパフォーマンスを象徴していたと言えるのではないでしょうか。

さらにその後も2012年まで、初級者を対象にしたクラスではHA23Vが7連勝を飾るなど、大活躍を見せるのです。

 

全国各地のレースにも波及!

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これにより、スズキHA23Vアルトバンは、改造制限が厳しいクラスでこそ威力を発揮する、優れたマシンであることが実証されました。

そして東北660選手権もそのコンセプトが受け入れられ、関西など他の地域でも同カテゴリーのレースが開催されるようになると、HA23Vアルトバンでの参戦が目立つようになっていったのです。

初期に東北まで遠征して戦っていた軽マシンたちは、地元でも開催されるようになったレースで再び火花を散らす争いを繰り広げます。そしてHA23Vはそこでも戦闘力が高く、コストパフォーマンスに優れた名車として活躍を見せました。

 

HA23Vの後継車たち

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2004年まで生産されていたHA23Vでしたが、2011年の東北660選手権に使用されていたのは2世代前のモデルでした。

つまりレースマシンとしては後継車になかなか恵まれなかったのですが、その次世代モデルたちも簡単に紹介したいと思います。

 

HA24V / HA24S

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2005年1月にモデルチェンジしたHA24Vはアルトバンとして初めて5ドア化されました。

大きく変更されたデザインは、賛否の別れるところかもしれませんが、乗用車版のHA24Sは日産にもピノとしてOEM供給されたこともあり、街ではよく見かけるモデルでした。

東北660選手権などレースにも数台ですが出場していたのですが、大幅な重量増加の影響は否めず、HA23Vに取って変わる存在にはなれませんでした。

 

HA25V / HA25S

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2009年12月のモデルチェンジでデザインが再び一新され、若干の軽量化とスポーティーなビジュアルとなったアルトバン(HA25V)。

しかしこちらもHA23Vと比較すると、積極的に使う理由が見当たらず、戦績もごくわずかでした。

結局5ドアによる重量増が嫌煙され、HA25Vは東北660選手権開幕時の最新車種だったにも関わらず、あまり日の目を浴びることは有りませんでした。

 

HA36V / HA36S

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2014年に登場した現行のHA36アルトは、先代からの思い切った軽量化で話題を呼びました。

中でもHA36Vアルトバンは前モデルより実に80kgもの軽量化に成功し、5ドアモデルながらHA23V以上に軽くなったのです。

やればできるじゃないか!というわけで今後の活躍が期待されますが、まだ新しすぎるためレースではあまり使われていません。

今後中古車の価格が安定してくるに従い、HA23Vからの世代交代が進むのかもしれません。

 

まとめ

レースマシンとしての後継車に恵まれなかったHA23Vアルトバンですが、ようやくHA36Vという後継車を得て、今後が楽しみな展開となりました。

HA36Vに乗り換えるドライバーが増加すれば、放出されたレース仕様のHA23Vを安価に手に入れることも可能となってくるので、新人ドライバーにとってはますます参入しやすくなるかもしれません。

現在もHA23Vは全国の新規格NA軽自動車レースで多数活躍し続けており、東北660選手権の2016年最終戦でも、出走33台のうち半数以上の19台がHA23Vでした。

デビュー時には想像もしなかった「レースにうってつけのマシン」として注目されてから約6年。

HA23VがかつてのKP61スターレットやB110サニーのような「伝説の名車」と呼ばれる日も近いのかもしれません。

スズキ HA23V アルトバン(Vl・FF)のスペック

全長×全幅×全高(mm):3,395×1,475×1,450

ホイールベース(mm):2,360

車両重量(kg):630

エンジン型式:K6A

エンジン仕様:直列3気筒DOHC12バルブ VVT

総排気量(cc):658

最高出力:54ps / 6,500rpm

最大トルク:6.4kgm / 3,500rpm

トランスミッション:5MT

駆動方式:FF

中古相場価格:15~39.9万円(レース仕様カスタム済:59.8~88万円)

 

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Writer Introduction
兵藤 忠彦

ダイハツ党で、かつてはジムカーナドライバーとしてダイハツチャレンジカップを中心に、全日本ジムカーナにもスポット参戦で出場。 現在はサザンサーキット(宮城県仙台市)を拠点に、主にオーガナイザー(主催者)側の立場からモータースポーツに関わっています。http://dctm.info/

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