日産が世界に誇るスーパーカー、R35 GT-R。デビューこそ2007年ですが、GT-Rの先行開発が発表されたのは2000年。先行開発期間から積算すると、2020年時点で20周年という節目の年なのです。また、2007年に登場して以来、基本コンポーネンツを変えることなく、2020年時点で市販期間13年が経過しようとしています。モデルイヤー制を取り入れ、毎年進化を続けているR35 GT-Rが、これまでどんな進化を遂げてきたのか、コンセプトカーから現在までの歴史を辿っていきましょう。

出典:https://www.gt-r50.nissan/#/jp/gallery

実は開発が止まっていた2000年

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2000年、日産「GT-R」の先行開発が発表されました。

このときはまだ、R34 GT-Rの販売が継続されており、R34の延長線上でのGT-R開発が行われていましたが、その後、開発は一時的にストップしています。

この事実は、後にR35 GT-Rの開発責任者である水野和敏氏が、「2000年にGT-Rの話が来たとき、R34の延長線のGT-Rはやりたくない」と、GT-R開発を断っていたことを、自身の講演で話し、明らかになりました。

2001年「GT-Rコンセプト」発表

2001年、第35回東京モーターショーに「GT-Rコンセプト」が出品されます。

この段階では、あくまでもコンセプトモデルとしての位置付けでした。

一般的にコンセプトモデルは、メーカーの今後の方針などを示す意味があります。

そして、このコンセプトモデルも例外ではなく、発表された東京モーターショーの時点では、日産社内においてR35 GT-Rの開発は、まだ本格的にスタートしていませんでした。

その理由として、2001年のコンセプトモデル発表時点では、水野氏がGT-Rの開発責任者に、まだ任命されていなかったからです。

2003年、開発責任者の決定と「GT-R」発売時期の発表

2003年、再び水野氏にGT-Rの開発が依頼されます。

当時社長だったカルロス・ゴーン氏は、「日本人のスゴさ、日産の技術力の高さを示すためには、スーパーカーが必要である。」というスーパーカーに対する思いを水野氏にぶつけ、すべての権限を委ねたのです。

そして、第37回東京モーターショーで、2007年にGT-Rを発売することを発表。

GT-Rの開発においての、ゴーン氏からの条件はたった1つ。

「丸型4灯のテールライトにすること」だったのは、有名なエピソードです。

2004年「GT-R」開発スタート

2004年、本格的にR35 GT-Rの開発がスタートします。

新しいプラットフォーム「PMパッケージ」が採用され、「マルチパフォーマンススーパーカー」という全く新しいジャンルのスーパーカーを世に示すために、急ピッチで開発は進められました。

2005年「GT-R PROTO」発表

2005年、第39回東京モーターショーで「GT-R PROTO」を出品。

ここでの注目点は「PROTO」であること。

つまり、プロトタイプ(PROTOTYPE)=「試作品」だったのです。

2007年、車名「日産・GT-R」に決定

2007年、車名を「日産 GT-R」とすることが正式に発表され、先行予約注文が開始されました。

2007年デビューイヤー

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最高出力480馬力、最大トルク60.0kgf·mの心臓をもつ「日産・GT-R」がついにデビューします。

晴れ舞台となったのは、第40回東京モーターショー。

世界初の試みとして、PlayStation Networkの「GT5 Prologue体験版」でも、同時に発表されました。

2008年、早速パワーアップ!

2008年には、エンジン出力が5馬力アップの485馬力へパワーアップされます。

さらに、フロントサスペンションのバネレートの向上、ショックアブソーバーの構造変更など、乗り味の変更もおこなわれました。

2009年、待望の「Spec V」登場

R34までは「V Spec」でしたが、R35 GT-Rでは「Spec V」の名でハイグレードモデルが販売されます。

専用チューニングのエンジンや、専用ブレンボ製カーボンセラミックブレーキ、さらには2シーター化や足まわりのバネ下軽量化など、徹底的に作り込まれたハイスペックバージョンの「Spec V」は、ベースグレードのGT-Rに比べ60kgの軽量化に成功。

軽量化がもたらす俊敏で回頭性の良い走りは「Spec V」の名に恥じない仕上がりで、ジャーナリストをはじめ、GT-Rファンからも高い評価を得ました。

そんな「Spec V」が話題となった2009年に、ベースグレードのサスペンションまわりも変更。

フロントサスペンションはショックアブソーバーとスプリング精度の向上がなされ、リアサスペンションはラジアスロッドブッシュ剛性が向上しています。

大幅改良となった2010年モデル

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開発責任者の水野氏は「デビューから3年後に、GT-Rの本当の姿を見せる」と2007年のGT-Rがデビューした時に公言しています。

そして、その言葉通り、2010年モデルでは、デザイン・メカニズム・グレード形態など、多数の改良が施されました。

まずは、大幅な出力アップ。

2010年モデルからは最高出力が530馬力、最大トルク62.5kgf·mとなり、従来よりも出力は45馬力、トルクは2.5kgf·mもアップしています。

デザインでは、LEDデイライトが装着されたことが、大きなトピックです。

フロントまわりでは、グリルには開口部を拡大した新デザインのフロントバンパーを採用。

フロントのダウンフォースが約10%増加したことも、走行に大きく影響しています。

そしてリアまわりでは、リアバンパーとテールパイプフィニッシャーのデザインを変更。

リアフォグランプの装着やアウトレットの追加、リアディフューザーを延長がなされました。

デザイン変更などによってリアのダウンフォースを10%向上し、床下冷却性能の向上、空気抵抗の低減も同時に達成。

テールランプとブレーキランプが4灯同時の点灯となったことも、トピックのひとつです。

メカニズム面では、サスペンションとブレーキの変更が行われました。

フロントサスペンションとリアサスペンションの特性変更が行われ、新開発のアルミ製フリーピストン仕様のショックアブソーバーを装着。

ブレーキは、独自開発の大径薄型ローターへ変更されて、フロントローターは、従来から10mmサイズアップした、390mmとなりました。

「Spec V」も標準車と同じく、エンジンの変更が行われ、マイナーチェンジ。

ハイギヤードブースト使用時は、最大トルクが64.5kgf·mまで引き上げられるようになり、「Spec V」らしい高いパフォーマンスを身につけました。

さらに、新グレードとして登場したのは「EGOIST(エゴイスト)」です。

GT-Rの高級グレードとして誕生し、本革の縫製や貼り込みが行われたステアリングのエンブレムには輪島蒔絵を採用。

さらには、専用ウーハーが採用され、オーナーに合わせたセッティングが可能なBOSEプレシジョンサウンドシステムを装備。

リアスポイラー、ホイール、チタンエキゾーストシステムは、「Spec V」と同じものが採用されました。

2011年、バージョンアップの年

2010年モデル以前のGT-Rユーザーを対象とした、「2011年バージョンアップキット」の販売がスタートします。

また、2011年モデルのGT-Rユーザーを対象とした「2011年モデル用バージョンアップキット」も発売されました。

2012年、更なるパワーアップ

エンジン出力が20馬力アップし、最大出力は550馬力、最大トルクは2.0kgf·mアップの64.5kgf·mとなり、ハイパワーなスポーツドライビングを極めます。

そして、ハンドル位置やプロペラシャフトが中心より右側に位置していることを考慮し、右ハンドル車は左右非対称のサスペンションを装着するなど、新たな試みを実施。

「Spec V」が廃止がされ、カスタマイズオプションの「For TRACK PACK」が追加されました。

オプション内容としては、ノルドリンクと共同開発のスポーツサスペンション、レイズ製アルミ鍛造ホイール、専用シートを装備し、リアシートは非装着。

「Spec V」と同じ内装にすることができるようになっています。

2013年、R35生みの親が日産を去る

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2013年、R35 GT-Rの開発責任者である水野氏が日産を退社。

今後のGT-Rがどうなるのか、予測不能となりました。

しかし、GT-Rは進化を止めることなく、ヘッドランプやテールランプのデザインを変更。

車体剛性を向上させ、エンジンの部分改良を実施します。

足まわりは、スプリングバネ定数、ショックアブソーバーの電子制御、フロントスタビライザーのバネ定数の最適化、リンクブッシュ類が見直しされ、路面追従性を高める事に成功。

また、「2013年モデル用バージョンアップキット」や、2007年〜2010年モデルのGT-Rユーザーを対象に「エンジン バージョンアップキット」、2012年モデル以前のGT-Rユーザーを対象に「サスペンション バージョンアップキット」も発売されました。

「年式に関係なくいつでも最新のGT-Rにするキットを販売していく」と、水野氏が公言していたように、最新のGT-Rへバージョンアップできるキットを多数リリースしたのです。

また、2013年は特別仕様車「スペシャルエディション」が登場。

ドライカーボン製リアスポイラー、ハイパーチタンカラーコートのレイズ製軽量鍛造アルミホイール、エンジンルームにゴールドのアルミ製型式プレートが装着された、スペシャルなGT-Rでした。

ボディカラーは特別塗装色の「ミッドナイト・オパール」で、全世界で100台限定の販売です。

2014年、田村宏志氏が開発責任者となる

開発責任者に、R34スカイラインGT-Rを手掛けた田村宏志氏が就任。

開発陣が変わったことで、グレードの形態やGT-Rの味付けに対する方向性が変わります。

そして、2014年にスポーツ性能を極めた「NISMO」が登場。

エンジンの最高出力は600馬力、最大トルク66.5kgf·mを発生させ、R35 GT-R史上最も高いパフォーマンスを発揮します。

2015年、GT-R 45周年アニバーサリー

45台限定の特別仕様車「45th Anniversary」をリリースします。

ボディカラーには、2001年モデルのスカイラインGT-R「M・Spec」に採用されていた特別塗装色「シリカブレス」を採用。

センタークラスター下部に専用エンブレム、エンジンルーム内に専用モデルナンバープレートが与えられた、45周年を祝う特別なR35 GT-Rとなっていました。

2016年、サーキット走行に特化

2016年「Track edition engineered by nismo」の販売が開始されました。

大変革の2017年モデル

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2017年モデルは大きな変更が加えられ、新たな開発責任者である田村氏らしさを感じられる「大人のGT-R」へと生まれ変わります。

エンジンの出力は20馬力アップの570馬力、最大トルクは0.5kgf·mアップの65.0kgf·mへと向上。

デザインでは、2010年代後半から始まった日産の新たなアイコンである「Vモーショングリル」をGT-Rにも採用し、フロント・サイド・リアの細部形状を変更するなどして全長を延長。

空気抵抗・ダウンフォース・冷却性能を向上させて、高性能化されました。

操作面においては、パドルシフトをステアリング固定式に変更。

パドルがステアリングと一緒に回るようになり、コーナリング中でもステアリングから手を離すことなくギア操作をすることが可能となるなど、操作性が向上します。

乗り味に関しては、ボディ剛性のアップに合わせ、ショックアブソーバー・スプリング・スタビライザーのセットアップを変更し、タイヤの接地性を向上。

高速走行の安定性や、直進安定性を引き上げました。

2018年、50周年記念コラボレーション

カーデザインの巨匠ジョルジェット・ジウジアーロが創設したカロッツェリア、「イタルデザイン」と日産の協業により、「Nissan GT-R50 by Italdesign」のプロトタイプが発表されます。

後に50台限定で販売され、価格は99万ユーロ(約1億2740万円)でした。

2019年、日産ブランドアンバサダー就任

テニスプレイヤーの大坂なおみ選手が、日産ブランドアンバサダーに就任。

R35 GT-R「大坂なおみ選手 日産ブランドアンバサダー就任記念モデル」が発売されました。

2020年、GT-R 50周年アニバーサリー

スカイライン2000GT-Rの生誕50周年を記念した期間限定モデル、「50th Anniversary」が発表されます。

R35 GT-Rの軌跡

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2007年のR35 GT-Rの登場から13年間で、エンジンの出力は480馬力から570馬力(NISMOを除く)まで引き上げられ、最大トルクは60.0kgf·mから65.0kgf·m(NISMOを除く)へとアップしています。

もちろん、エンジンのみならずボディ剛性も強化されました。

しかし、最も多い改良は、サスペンションをはじめとした足まわりの改良です。

ハイパフォーマンスで良く回るエンジンを作っても、ボディの強化をしても、路面とクルマが接する部分は4本のタイヤのみ。

これは、スーパーカーだろうと軽自動車だろうと基本的には変わりません。

「良いクルマは足が良いクルマ」であることを実証し続けているのがR35 GT-Rの、本当のスゴさなのではないでしょうか。

まとめ

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GT-Rの歴史を振り返ってみると、2020年はGT-Rにとって特別な年であることがわかります。

スカイライン2000 GT-Rの誕生から50周年、後にR35となるGT-Rの先行開発が発表されてから20年、大幅改良が実施され、スーパーカーとしての完成度を一気に高めた2010年モデルから10年と、節目となる記念すべき年が2020年です。

R35 GT-Rは13年間で、ほとんど全てが変えられました。

しかし、変わっていない部分もあります。

それは基本設計、エンジン、トランスミッション、駆動システムで、2007年のデビューから2020年時点まで変わることなく受け継がれてきました。

基本を変えずに技術力で中身を進化させる。

まさに職人技が、R35 GT-Rの進化を支えているのです。

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