ボッシュは2輪車の安全性能を高めるために、バイクにレーダーを搭載し、ライディングをアシストするシステムを開発したことを発表しました。近年、自動車業界では事故を減らすために予防安全システムやドライバーの運転支援システムなどの開発に注力していますが、2輪車業界もその流れは同様のようです。
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自動車の予防安全装置と同等機能や2輪車独自のシステムも
ドイツの自動車部品メーカーであるボッシュ(BOSCH)は、自動車のみならず2輪車でも新たな技術を研究・開発しています。
そんなボッシュが、2輪車の新たな安全装置を開発したことを発表しました。
ちなみに国産の自動車メーカーの予防安全装置では、トヨタが『トヨタ・セーフティ・センス』、ホンダが『ホンダ・センシング』、スバルが『アイサイト』など各社が開発に力を入れています。
これらはレーザーレーダーやカメラを搭載し、クルマだけでなく歩行者も検知してシステムが危険と判断すれば自動ブレーキが作動するなどの衝突事故抑制に繋がるものです。
そして、ボッシュが今回開発したシステムも、クルマと同等のアシスタンスシステムやネットワーク化技術を用いたシステムとなっていますが、それに加えて、バイクがスリップしても転倒しないように制御する仕組みなど、クルマにはない2輪独自の事故も予防可能なシステムとなっています。
2輪車初!レーダーベースのアシスタンスシステム
ボッシュが開発したライディングアシスタンスシステムは、2輪車用レーダーを車両の前後に搭載。
2輪車の左右後方に迫っているクルマを検知し、ライダーに注意を喚起します。
また、前方は5mほどの範囲をレーダーが検知し、追突防止やライディングをアシストします。
これらの機能は、ACC(アダプティブクルーズコントロール)、FCW(衝突予知警報)、BSD(死角検知)という3つに集約されています。
ACC(アダプティブクルーズコントロール)
ACC(アダプティブクルーズコントロール)は前方を走る車両との適切な車間距離を保ちながら、バイクが自動で走行してくれるシステムです。
高速道路や自動車専用道路などクルージング走行時のみ作動し、時速100キロに設定すれば、スロットル操作をする事なく時速100キロを保って巡航。
前方に他の車両が走行していれば安全な車間距離を維持し、交通の流れに合わせて車速を調整をしてくれます。
ただし、前方車両の速度に合わせられる領域は最低時速30km/hまで。
それよりも低速になれば、ライダー手動のアクセル操作に自動で切り替わります。
そのため自動車のように渋滞時の、ノロノロ運転時にACCは使用できません。
それでも、前走車との距離が不十分だったために発生する追突を効果的に防ぎ、ライダーの負担を減らしてくれる点は長距離ツーリングで非常に有効な機能です。
FCW(衝突予知警報)
FCW(衝突余地警報)は走行時に他の車両が危険レベルで接近しているにも関わらず、ライダーがその状況に気づかないなど、何も対処しない場合にレーダーがそれを検知し、聴覚的、または視覚的な信号を通じてライダーに警告します。
このシステムは、車両が始動するとすぐに作動して全速度域で稼働。
それにより、街乗りでも高速道路でも他車の危険な接近があれば、FCWが作動します。
BSD(死角検知)
BSD(死角検知)はバイクの左右後方をモニターし、周囲の状況を把握。
レーダーセンサーが”電子の目”として機能し、ライダーから見えにくい位置の対象物をバイク側が常にチェックしている状況を生み出しています。
また、ミラーで確認し辛い左右の斜め後ろという死角に車両があれば、それを知らずに車線変更してしまうと接触事故になる可能性が一気に増加します。
それを阻止するために、死角に車両がいることをミラーに視覚信号などを表示して警告します。
これにより、ライダーが安全に車線変更できるように支援するシステムです。
モーターサイクル用スタビリティコントロール(MSC)
ボッシュは、『モーターサイクル用スタビリティコントロール(MSC)』と呼ばれる2輪車向け『オール イン ワン』型安全システムを開発しました。
これは、バイク自身がコーナリング時の傾斜角をパラメーターとして測定し、走行状況に合わせて加減速を調整するもの。
2輪事故の原因の多くはコーナーで減速した時のローサイド(バイクが寝ている側に転ぶ)やハイサイド(バイクが寝ているのと反対側に転ぶ)であり、MSCはそれを抑制するシステムなのです。
また、ボッシュはMSCの要となる新型6Dセンサーを開発。
この新型6Dセンサーは、現時点で市場に投入されている商品としては世界最小・最軽量のもので、センサーの搭載位置や方向などの自由度が高いため、さまざまな車両に搭載することが可能です。
2輪車とクルマの車間通信
現在のレーダーベースのアシスタンスシステムは、レーダーによって周りの車両を検知するシステムが主流ですが、公衆無線LANを用いて周りの車両とつなげ、離れた場所から自らが乗るバイクの存在を他の車両に知らせるシステムをボッシュは開発しています。
半径数百メートル圏内にいる車両同士は1秒間に最大10回の頻度で、車種、速度、位置、進行方向などの情報を交換。
走行時に、この先出くわすだろう車両をセンサーで捉えるはるか前に認識させ、事故を未然に防ぐことができるのです。
この、2輪車とクルマとの間でデータ交換を行う方法は、公共無線LAN規格(ITS G5)がベースとなっています。
データの送受信に要する時間は非常に短く、わずか数ミリ秒であり、実用されればすべての道路利用者が交通状況に関連する重要な情報を生成・送信することが可能となります。
タイヤがスリップしてもガスを噴射してバイクを立て直す
近年、倒れないバイクの開発が進んでいます。
ヤマハはトリシティなどでLMW(リーニングマルチホイール)を採用し、前2輪・後1輪の安定感ある車両を発売。
ホンダは2017年1月にアメリカで行われたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で、ホンダ・ライディング・アシストの実験車を公開し、2輪でありながら低速走行または停車時でも自立することを可能にしました。
そして、ボッシュが新しく開発した転倒抑止技術は『Sliding mitigation research project』。
コーナリング時にオイルや砂利を踏んでしまった場合、スリップし、そのまま転倒してしてしまうことがあると思います。
そこでボッシュが考えたのは、車両からガスを噴射し推進力でバイクを立て直すというアイディアでした。
スリップダウンした場合、一定値を超えると乗用車のエアバッグに使用されるタイプのガスアキュムレータからガスを放出。
コーナーのアウト側に向かってガスを噴射し、外に滑り出す方向に対して戻推力を発生させてコーナーリング時の姿勢を立て直します。
とてもユニークなアイディアですが、市販化については不明。
しかし、このシステムがテストで成功している動画を見る限り、実用化の可能性は十分考えられるのではないでしょうか。
まとめ
ボッシュが開発したレーダーベースのアシスタンスシステムは、2020年にドゥカティとKTMの市販車に搭載される予定です。
残念ながら国産2輪メーカーに、ボッシュのアシスタンスシステムが採用されるかどうかは不明。
国産自動車メーカーが自社独自の予防安全装置の開発に力をいれているため、おそらく国内2輪メーカーも自社で開発するのではないでしょうか。
特にホンダやスズキは、自動車で既に予防安全装置の開発と実用化を実現しているため、それをバイクに応用させる事も十二分に考えられます。
スーパースポーツバイクにおいて、最高速や馬力競争が激化していますが、今後は事故を未然に防ぐ予防安全の面でも技術開発競争が激しくなっていくかもしれません。
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