唐草模様に漢字のスポンサーロゴ、そしてチーム名には世界的アクションスターの名前。ル・マン24時間レースで総合2位を獲得した「ジャッキー・チェンDCレーシング」は、間違いなく今年最も知名度を上げたチームです。一時はポルシェを従えトップを走った彼らは、一体どんなチームなのでしょうか?ジャッキー・チェンとの関係も含め、ご紹介いたします。

 

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ジャッキー・チェンDCレーシングとは

 

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チームの結成は2015年、アジアン・ルマンシリーズのチャンピオンでもあるレーシングドライバー、デビッド・チャンが「DCレーシング」を旗揚げしたのが始まりでした。

同年3月に、言わずと知れた映画俳優ジャッキー・チェンと運命的な出会いを果たしたチャンは、映画「栄光のルマン」の話題で意気投合!

これが縁となり、共同オーナーとしてレーシングチームを立ち上げるプロジェクトが動き出したのです。

2016年シーズンはアルピーヌとパートナーシップを結び、世界耐久選手権(WEC)にLMP2クラスからエントリー。

チャン自らもステアリングを握り、プロトタイプマシン「アルピーヌA460s」を走らせました。

 

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そしてシーズン末の10月、チーム名を正式に「ジャッキー・チェンDCレーシング」に改称。
2014年のル・マンでクラス優勝を果たした「Jota Sport」と提携し、2017年シーズンのフル参戦を表明したのです。

 

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また、マシンにおいては非常に特徴的なカラーリングを纏っており、風水で「繁栄」を意味する唐草模様で彩られており、他にも 「龍」のロゴをあしらったユニフォームなど、随所に中国由来のチームらしい世界観が散りばめられていました。

 

ジャッキー・チェンのクルマ愛は半端じゃない

 

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コミカルな演技と本格的なアクションを組み合わせた作風で、世界的スターとなったジャッキー・チェン。

彼の映画を観たことがあれば、レース好き・クルマ好きであることは明確で、ハッキリと伝わってくると思います。

実は彼、一時はランボルギーニや日本製スポーツカーなど、50台ものクルマを保有していたという東洋きってのカーマニア。

特に彼の作品にはランサーやGTO、ミラージュ、パジェロといった三菱車が多く登場し、公式に三菱自動車のイメージキャラクターも務めていたほどです。

そんな彼がリスペクトするカーアクション映画が、前述したスティーブ・マックィーン主演の「栄光のル・マン」でした。

 

これは、恋愛要素など映画的アレンジをそぎ落とし、ル・マン24時間をとことんリアルに描いたストイックな映画で、レースファンにとっては不世出の傑作として語り継がれています。

ジャッキーはこの映画に心酔し、スターとして成功を収める以前からル・マンの魅力に魅せられていました。

その事からも、彼が現実の”ル・マン制覇”という夢に辿り着いたことは、もしかすると必然だったのかもしれません。

 

あわや総合優勝!?ル・マンで映画並みの大活躍

 

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迎えた2017年のル・マン。ジャッキーチェンDCレーシングは2台の「オレカ07Sギブソン」をLMP2クラスに投入。

今年からLMP2クラスのマシンはエンジンが全車ワンメイクとなり、WECのシーズン開幕から昨年を上回る接戦となっていました。

ル・マン公式予選では中国出身であるホーピン・トゥンらの38号車がクラス3位、チャンの37号車は9位を確保します。

スタート序盤でトヨタ全車がトラブルにより脱落、ポルシェもフィニッシュまで3時間の段階でトップの1号車がリタイアという荒れた展開に。

そんな中、堅実にスティントをこなしてクラストップを走っていた38号車は、なんと総合1位に躍り出ます。

なんと、レース開始2時間でトラブルに襲われ、1時間のロスをしたポルシェ2号車の追撃を受けながらも、このまま行けば総合優勝という位置にいたのです。

しかしチームは「クラス優勝」という目標に集中。

ポルシェの追撃をかわす為にペースを上げることはしませんでした。

なぜなら、実は彼らもノートラブルということはなく、序盤から弱点であるミッションをいたわりながらの走行を強いられていたのです。

その為レース終盤、ファステストをマークするペースで迫るポルシェは、ジャッキー・チェンDCのマシンをあっさりとオーバーテイク。

 

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さぞ悔しがっているかと思いきや、パドックでその光景を見守るチャンらは笑顔で、「いい夢見たぜ!」という爽やかな表情が印象的でした。

LMP1の出力はハイブリッドシステム全体で1000ps、LMP2マシンは600psほどしかパワーが無く、ラップ差は毎周ごとに10秒ほどもあるのです。

そんな大きな性能差にも関わらず、ポルシェに次ぐ総合2位とクラス優勝を勝ち取ったジャッキーチェンDCレーシング。これは偉大なる勝利と言えるでしょう。

そして、38号車の ホーピン・トゥンは、中国人初のル・マン表彰台という快挙も同時に達成しています。

ちなみにレース後、クラス2位のレベリオンレーシングが失格になったことで37号車も総合3位・クラス2位に繰り上がりました。

ル・マンの90年以上の歴史を振り返っても、クラス下のマシンが総合優勝を争う今回のケースは初めての展開で、快挙に次ぐ快挙で、彼らは一気にスターダムへとのし上がったのです。

 

まとめ

 

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映画で人々に”夢”を与え続けてきたジャッキー・チェンが、JOTA Sport、そして新たな盟友デビッド・チャンとともに成し遂げたル・マンでのクラス優勝という快挙は、中国国内のみならず世界中のモータースポーツファンから大きな祝福を受けています。

優勝の現場に居合わせることが出来なかったジャッキーは、これを悔しがると同時に「オスカーと同じくらい嬉しいよ」とその喜びを語っていました。

また、このプロジェクトが共同オーナー兼ドライバーのチャンと、ホーピン・トゥンら中国出身のドライバーに大きなチャンスをもたらしたことも見逃せません。

ジャッキー・チェンDCレーシングが観客に新たな夢を見せ、一方でトヨタの社長が「メーカーにとって、モータースポーツに挑むことは必要不可欠」と熱く語った今年のル・マン。

モータースポーツの新たな一歩を垣間見た、熱い週末でした。

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