2リッター4WDターボスポーツにスバルが参入したのは1989年、初代レガシィから。それまで三菱 ギャランVR-4とトヨタ セリカGT-FOURの牙城だったこのクラスで着実に実績を上げていきますが、それは後の壮大なドラマの序曲に過ぎませんでした。そう、本当の始まりは1992年、ともにデビューした三菱 ランサーエボリューション(以下、ランエボ)とWRCで世界を席巻した、GC8型インプレッサWRXです。

Photo by Nic Redhead

 

奇しくもライバルと同じ手法で開発、デビューしたGC8インプレッサWRX

Photo by Brian Snelson

1992年10月、スバルからレオーネ後継として1台の小型車がデビューします。

スバル インプレッサ。

スバル1000以来伝統の水平対向エンジン、同じく初代レオーネ以来の4WDを組み合わせた、スバル定番メカニズムを備えた新時代の大衆車です。

既に1989年デビューのレガシィで旧時代のイメージを払拭していたスバルにとっては、待望の1.5~1.8リッタークラス車で、4ドアセダンと5ドアハッチバック(スポーツワゴン)、2ドアクーペ(輸出用、後にリトナとして国内追加)の3タイプが設定されていました。

そのうち、それまでレガシィRS用だった2リッターターボEJ20を搭載し、小型軽量ボディにハイパワーエンジンという組み合わせでWRC(世界ラリー選手権)必勝を狙ったのが、GC8インプレッサWRXです。

「小型車に格上車のエンジンを搭載して戦闘力の高いマシンを作る」という手法は、国産車でも古くはトヨタTE27カローラレビン / スプリンタートレノ(カローラにセリカの1.6リッターDOHCエンジンを搭載)で実績があり、目新しい手法ではありません。

しかし、インプレッサWRXデビューの前月には三菱 ランエボがデビュー、これもギャランVR-4のパワーユニットを小型のランサーに押し込んだもので、後にステージを選ばず大激闘を繰り広げる2台のライバルは、奇しくも同じ手法で同時期に誕生していたのです。

そして1993年8月、インプレッサWRXのWRCデビューと同時に、長い戦いのゴングは鳴りました。

 

激闘WRC!まずは主役争いの切符を狙う

Photo by Nic Redhead

レガシィRSで勝ちあぐねていたスバルワークスが、1993年WRC第8戦ラリー・オブ・ニュージーランドでようやく初勝利。

その翌戦1000湖ラリーでデビューしたインプレッサWRXは、初戦にして2位入賞と幸先良いスタートを切りました。

当時のWRCはトヨタがセリカGT-FOUR(ST182)でその年のメイクス&ドライバーズのダブルタイトルを決める絶好調ぶりで、それをフォードワークスのエスコートRSコスワースとプライベーターのランチア デルタHFインテグラーレが追いかけるという構図。

スバルや三菱はワークス体制とはいえ「時々良いところを見せる」程度で、まだまだ主役とは言えませんでした。

その頃のゲームセンターやゲーム機のラリーゲームも「セリカとデルタの一騎打ち」のようなもので、スバルや三菱はまだまだ脇役だったのを覚えている人も多いのでは?

 

マクレーやサインツとともに、世界の頂点へ!

Photo by Brian Snelson

1994年のWRCもトヨタのダブルタイトルで終わりましたが、この年3勝を挙げたインプレッサWRXはメイクスでトヨタに次ぐ2位。

ドライバーズタイトルでも2位につけたカルロス・サインツが優勝1回を含む安定したリザルトを残せば、優勝かリタイヤかと波が激しく「マックラッシュ」の異名を取ったコリン・マクレーも2勝を挙げ、「世界の頂点まであと一歩!」の位置につけました。

レガシィからインプレッサへの変更は大正解で、まだ熟成に苦しんでいたランエボIIを尻目に、ひと足早くタイトル争いの主役に名乗りを上げたのです。

翌1995年はトヨタが新型ながら大きく重すぎたST205セリカの熟成に苦戦、しかも不正リストリクター発覚でポイントはく奪の憂き目に遭います。

一方で快調に勝利とポイントを重ねたインプレッサWRXは、「マックラッシュ」を返上する活躍で開眼、2勝を挙げたマクレーと3勝したサインツで計5勝。

メイクス&ドライバーズ(マクレー)のダブルタイトルを取り、ついに世界の頂点に立ちました!

以降、2000年までの間に、1996年と1997年の2回メイクスタイトルを獲得しています。

 

グラベルで、ターマックでランエボと宿命の激闘

Photo by Ben

WRCでも激闘を続ける一方、国内でも歴代ランエボとラリー、ダートトライアル、ジムカーナとあらゆるステージで激闘を続けました。

そこで大いに威力を発揮したのがインプレッサWRXのDCCD(ドライバーズコントロールセンターデフ)で、サイドブレーキを引くと同時にセンターデフがフリーになるため、それを使ってサイドターンを行うセクションでは有利でした。

特にバージョンIII以前のWRX STiは「ガラスのミッション」と言われるほど駆動系の弱点を抱えていましたが、信頼性とパワーのランエボか、俊敏なインプレッサWRXかと互角の勝負を繰り広げ、GC8の時代には完全に決着がつかなかったと言えます。

 

繰り返されたバージョンアップとコンプリートカー

なお、インプレッサWRXもランエボ同様バージョンアップを繰り返し、1996年にはランエボIVとほぼ同時に当時の国内自主規制値280馬力に到達、最終的にはバージョンVIに到達しました。

1997年にはWRカー同様、インプレッサ・リトナをベースにした2ドアクーペの「WRXタイプR」が登場。

Photo by ilikewaffles11

1998年にはさらにワイドボディ化でWRカーを再現し、2.2リッターターボのEJ22改を搭載したコンプリートカー「インプレッサ22B」が400台限定で販売されました。

出典:https://upload.wikimedia.org/

また、2017年現在まで続くSTIコンプリートカーもGC8で初設定され、専用エアロやエンジンも300馬力にチューンされた、最初の「S201 STi Version」が2000年に発売されています。

 

代表的なグレードと中古車相場

スバル GC8 インプレッサ WRXタイプRA STiバージョンVI 1999年式

全長×全幅×全高(mm):4,350×1,690×1,405

ホイールベース(mm):2,520

車両重量(kg):1,240

エンジン仕様・型式:EJ20 水平対向4気筒DOHC16バルブ ICターボ

総排気量(cc):1,994cc

最高出力:280ps/6,500rpm

最大トルク:36.0kgm/4,000pm

トランスミッション:5MT

駆動方式:4WD

中古車相場:15.8~219万円(GC8 WRX系・22Bは除く) ・329.8~1,250万円(22B)

 

まとめ

デビュー当初からモータースポーツの最前線で活躍し続けたGC8インプレッサWRXですが、後継のGDBにバトンタッチした2000年を境として、急速に表舞台から姿を消していきます。

2リッター4WDターボというジャンルはもっとも進化が激しく、最新型でなければ勝てないという事情もありましたが、デビューから8年もの間そのステージに立ち続けられたのは、GC8の基本性能が高いおかげでもありました。

生産終了から17年、さすがにモータースポーツの第1線で見る機会はだいぶ減りましたが、今でもその姿を見ると、かつての栄光の日々が蘇ります。

そのスペックやメカニズムもさることながら、皆さんが思い浮かべるのはやはり、「555」のスポンサーがついた、若き日の故 コリン・マクレーが飛ぶように駆るスバルブルーのGC8では無いでしょうか?

 

あわせて読みたい

今こそ買って走りを楽しみたい!スバルの名車、インプレッサWRXとは

WRC、ワールドラリーカー時代の歴代チャンピオンマシンとは?1997-2003年は、ランサーが、インプレッサが激戦を繰り広げた時代!

WRXSTI(VAB/VAG)最新カスタム・デモカー20選!本気で走るなら参考にしたい!

 

[amazonjs asin=”B01MDNV05G” locale=”JP” title=”ニューモデル速報 第543弾 新型インプレッサのすべて”]

 

Motorzではメールマガジンを始めました!

編集部の裏話が聞けたり、月に一度は抽選でプレゼントがもらえるかも!?

気になった方は、Motorz記事「メールマガジン「MotorzNews」はじめました。」をお読みいただくか、以下のフォームからご登録をお願いします!